今の日本、最大の問題は福島第一原発の「廃炉」だと私は思う。その課題に取り組むNHKスペシャル「廃炉への道〜第3回〜核燃料デブリ未知なる闘い」(5月17日)を見た。
3基の原子炉の「廃炉」はまだ始まったとはいえない。溶解した核燃料は原子炉内部の構造物と結合し、大量の放射能を含んだ「デブリ」(Debris瓦礫(がれき))となって最下部の水中に没している。
このほどようやく原子炉内を外部から宇宙線によって透視する装置が開発され、これと連動するロボットカメラが一号機に投入された。蛇のように筒型につながれたカメラは、直径10センチほどの配管口をくぐり抜け、原子炉内部に入ってから立体的走行を始めたが、間もなく溝にはまり込み動けなくなった。溶け落ち、今は水中にある核燃料デブリの状況を調べようとしたのだが、それは叶わなかった。しかし福島原発の原子炉内部を、一部とは言え、一般の市民がこの目で見ることが出来たのは画期的だ。
デブリの取り出しがなければ原子炉解体は始まらない。少なくとも40年はかかるという廃炉の第一歩を私たちはいつ目にすることができるのか。
このシリーズは昨年4月に第1回、第2回が放送されたあと、今回の第3回の放送まで進展ないまま1年が経過した。1回目はメルトダウンした3基の原発の現状紹介にとどまり、2回目は廃炉を担う作業員に焦点を当てた。今回ようやく、原子炉内部を「見る」ためのロボットカメラの投入だった。
「廃炉」の報道では、NHKは日本テレビJCJ賞受賞)などに後れを取っていたが、長期取材となるとやはりNHKの取材力に期待するところが大きい。8月には新たなカメラが、原子炉最下部の水中に入るという。″放射能をたっぷり含んだデブリ″がどのような状態にあるのかの調査を私たちは注視している。それを確認することで初めて「廃炉」の第一歩が踏み出されるからだ。核燃料デブリは再臨界することもあり得ると科学者は警告している。私たちはこの日本の国土でいつになれば安心して眠りにつくことができるだろうか。いかに時間がかかろうとNHKがこの状況を追い続け、記録し続けて欲しい。
(すみい・たかお ジャーナリスト)
(「しんぶん赤旗」2015年6月1日より転載)