日本共産党の倉林明子議員が5月29日の参院本会議で行った、電気事業法改定案の質問(要旨)は以下の通りです。
本法案は、東日本大震災と福島第1原発事故を契機に、戦後60年以上続いてきた発送電一貫、地域独占の電力供給体制を抜本的に見直す必要があるとして進められてきた「電力システム改革」の総仕上げとしています。
総仕上げにあたり、福島原発事故の実態を踏まえることは当然です。事故から4年以上たった今も、汚染水をめぐるトラブルは後を絶たず、事故収束の見通しは全く見えていません。総理が前面に立ってやるべきは、原発の再稼働や輸出を進めることではなく、原発事故の収束と原因究明ではありませんか。
東電破たん処理
津波による深刻な事故が起こることを知りながら必要な対策もとらず、事故を起こしたのちもトラブル・隠ぺいを繰り返す東京電力に原子力を扱う当事者能力がないことは明らかです。さらに除染費用や賠償を出し渋る東電は、福島再生の障害ともなっています。本法案の付則第74条では、原子力政策の変更による電力会社の競争条件の悪化に対し必要な改善措置等を講ずるとして、原子力の事業環境整備を行うなどもっての外です。東電を破たん処理し、大株主とメガバンクの責任を問うことを強く求めます。
原発事故を経験した国民は再生可能エネルギーの爆発的な普及を期待しました。再生可能エネルギー特別措置法いわゆるFIT法で、その可能性が大きく広がりました。一般電気事業者の地域独占を廃止する電力システム改革は、広域で運用すればするほど、その変動を緩和できる再生可能エネルギーの普及促進を加速させる機能を果たすはずでした。ところが、需給調整機能を果たす広域的運営推進機関の運用が始まる前に、政府は一般電気事業者が再生可能エネルギーの接続を拒否できるFIT法の規則改定を行いました。接続義務の原則と例外を逆転させるもので、すでに再生可能エネルギー普及のブレーキとなっています。総理は「接続可能量は原子力も含め、ベースロード電源の長期的な稼働計画を前提としている」と答弁していますが、動いていない原発が最大限稼働することを前提としていることが問題なのです。再生可能エネルギーの最大限の導入という方針と矛盾するではありませんか。
情報公開徹底を
エネルギーを自由に選べるとしていますが、公共料金である電気やガス料金の中身がきちんと消費者にも情報公開されることが必要です。ところが、規制料金の撤廃により、公聴会も廃止するとしています。原発事故後、消費者にようやく見え始めた料金にかかわる情報が全く隠れて、ブラックボックス化することになりかねません。新たに市場の監視を行うとして設置される電力・ガス取引等監視委員会が、託送料金や経過措置期間中の小売料金について厳格な審査を行うとしていますが、完全自由化後は市場の監視のみとなるものです。情報公開や料金決定にこれまで以上に消費者意見が反映できる制度とし、自由化後も電源構成も含む原価情報と合わせて料金決定に至る情報公開を徹底すべきです。
本法案がめざすシステム改革は、原発の再稼働を担保し、事故をおこした東電をはじめとした電力会社、原子炉メーカー・石油・大手商社などがエネルギー市場で活躍できる「成長戦略」の具体化に他なりません。発送電の完全な所有権分離と送電網の公的管理を行い、地域のエネルギーは地域でつくる小規模分散・地域循環型システムヘの民主的改革を求めます。
(「しんぶん赤旗」2015年6月1日より転載)