国と東京電力に原状回復と損害賠償を求めた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(中島孝団長)の第12回口頭弁論が5月19日、福島地裁(金澤秀樹裁判長)で行われました。
地震・津波研究の第一人者、元東大地震研究所准教授の都司嘉宣(つじ・よしのぶ)氏が原告側証人に立ち、地震や津波によって東京電力福島第1原発事故が起き得ることを予見し、被害を防ぐことが可能だったことについて証言しました。
都司氏は、1995年以降、地震調査研究推進本部の地震調査委員会ら委員を務め、「長期評価」の策定に加わっていました。
都司氏は、2002年7月に国の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」で明治三陸地震(1896年)と同様の津波が三陸沖から房総沖にかけ発生する可能性があるとした内容の重要性を指摘。「明治三陸地震を福島沖に想定していれば、少なくとも原子力発電所のように事故を起こしてはならない重大な施設においては、抜本的な津波対策が必要だったということに思い至ったはず」とのべ、予見可能で結果を回避できたとし、この「長期評価」の知見を取り込まなかった国と東電を批判しました。
「明治三陸地震」では、最高38・2メートルの津波を記録しています。
原発の津波対策について都司氏は過酷事故が起きれば、「被害が極めて甚大かつ長期化することは、今回の原発事故が示す通りです」と主張しました。
裁判長がかわったことから、中島団長らがこれまでの原告の主張について意見陳述しました。
被告の国は「規制権限がなかった」などと陳述。東電は年間20ミリシーベルト以下の低線量地の健康影響は小さいと暴言を繰り返しました。
次回口頭弁論で都司証言に対する反対尋問が行われます。
(「しんぶん赤旗」2015年5月20日より転載)