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“福島に生きる”湧き上がること逃げずに書く・・詩人 二階堂晃子さん(71)

「ふるさとが消えた」と訴える二階堂さん
「ふるさとが消えた」と訴える二階堂さん

 福島県双葉町生まれの二階堂晃子(にかいどう・てるこ)さん(71)は、詩集『悲しみの向こうに─故郷・双葉町を奪われて』を2013年に発行。福島県現代詩人会奨励賞を受賞しました。

 巻頭詩「生きている声」の一節には、こう記しています。

 うめき声を耳に残し/目に焼き付いた瓦礫(がれき)から伸びた指先/そのまま逃げねばならぬ救助員の地獄/助けを待ち焦がれ絶望の果て/命のともしびを消していった人びとの地獄/請戸地区津波犠牲者一八〇人余の地獄/それにつながる人々の地獄

 「3・11」の翌日。福島県浪江町請戸地区では、必死に救助を待っていた津波被災者が置き去りにされました。東京電力福島第1原発事故で放射能が襲ってくることで町民全員避難命令が優先されたためでした。

 幾たび命芽生える春がめぐり来ようとも/末代まで消えぬ地獄

■「リアル」に表現

 詩は、そのときの地獄をリアルに表現しています。

 双葉町に育ち請戸村立請戸小学校に通いました。

 福島大学を卒業。小学校・中学校の教員を務め、浪江小学校で働いたときもありました。「自立した女性として生きたい。また、子どもが好きだということもあって教師になりました」

 1954年に始まった「都市と農村を結ぶ 平和と友情」をスローガンにした青年・学生の交流集会「五色のつどい」で詩の教室に参加し、土井大助氏(故人)から声をかけられたことが詩作をするきっかけの1つとなりました。

 現在は、「子どもの立場に立つことに努力」し、学校心理士としていじめや不登校、心の悩み相談を受けています。

 福島大学の先輩から「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告になるよう誘われて原告団に加わりました。生きる権利として、住むこと、働くこと、生活を取り戻すこと、人権を守るすべてのことを補償させるために原告になりました。

 生業訴訟原告団がまとめた証言集・第三集に手記を寄せています。

■詩の考え変わる

 「請戸。3・11の大津波で壊滅した町。東京電力第一原発のメルトダウンによって、瓦慄の下の有ったかも知れない命を救えなかった町。皮肉にも電力開発の補助金で建てられた請戸小学校だけが、唯一の廃屋立体として残った町。人が消えた町」「ふるさとが消え、戻れない被災者が失ったものは、建物や車や田畑だけではない。家族の有り様そのものが破壊されたのだ。深い悲しみを禁じることができない」と。

 原発事故は「詩についての考え方を変えることになった」といいます。

 「日常のあたたかいよしなのことを書けばいいと思っていました。3・11が起きて、生々しい湧き上がることを逃げないで書こうと思いました」

 原発事故の被災者同士なのに分断されていて、原発事故のことをいいづらくなっていること、双葉町に入ると現実をまざまざと見せ付けられること、将来、孫に放射能の影が出てきたらどうしよう─。

 書き続けていかなければいけないと感じています。

(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2015年4月22日より転載)

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