地震、津波に加え、東京電力福島第1原発事故の放射能被害に苦しむ福島県では、被災者の生活再建の遅れがきわめて深刻になっていることが、本紙の被災者300人実態調査で明らかになりました。
今年中に仮設住宅などを出て次の住まいに移れるかという問いに、福島では、「移れない」36%、「わからない」49%が合わせて85%に上りました。
浪江町から桑折町の仮設住宅に避難している農家の女性(68)は、「家は建てて5年。帰れないのでどうしようもない。コメを1町歩つくり、野菜は直売してきたけれど、農業の再建も難しい」と話しました。
子どもが学校に通っているため場所が離れた復興公営住宅や自宅には移れず、仮設に残り続けるケースも増えています。
自宅に戻れぬ
広野町からいわき市に避難中で高校生、中学生、小学生の3人の子を持つ女性(41)=主婦=も、その一人です。「子どもたちは今の学校に通いたいといっているので、広野町の自宅には戻れません」
雇用と生業(なりわい)の再建の遅れも、福島はより深刻です。「失業中」は45%で岩手、宮城、福島3県全体の32%より高く、この傾向は震災1年時から変わっていません。
農漁業、自営業など生業の再建も福島では「めどがただない」87%、「あまり進んでいない」4%で計91%。3県全体の78%より高くなっています。
富岡町から郡山市に避難中の男性(49)は、「富岡に帰って豆腐店を再開するにも客がいないのでは。資金的にも難しく、半分あきらめている。国策の被害者だから公的支援をしてほしい」と訴えます。
「全面賠償と健康や暮らしを守る対策で国は責任を果たしていますか」との問いに、「果たしている」はわずか10%。「あまり果たしていない」40%、「まったく果たしていない」32%が計72%を占めました。安倍政権が進める原発再稼働につい
て、福島では反対が81%に上りました。
飯舘村から伊達市の仮設住宅に避難中の女性(60)は、「原発の再稼働などとんでもない。私たちが負っている苦難をどう考えているのか」と憤ります。
分断させられ
国と東電の施策によって、住民が分断させられていることへの苦悩や怒りも語られました。浪江町から福島市に避難している女性(64)は、「区域の違いで損害賠償に格差をつけるのはおかしい」と話します。
日本共産党は、被害者を分断する線引きや排除、期限切れを理由にした切り捨てをやめ、すべての被害者が生活と生業を再建できるまで、国と東電が責任をもって等しく支援すべきだと主張しています。
(つづく)