ポイント
・国民に経産省が反論
・公募開始見切り発車
・意見聴取会も開かず
安倍晋三政権が発表したエネルギー基本計画案は、昨年末に経済産業省の審議会がまとめた原案がもとになっています。経産省は原案の段階で、国民の声を聞くための意見公募を実施。政府案は、その結果を反映しているので、国民の声が生かされているといいます。
しかし、今回の意見公募のやり方は、開始時も発表時も正常ではありません。
意見公募の集約結果で目に付くのが「原発ゼロ」を求める国民の声に対する経産省の反論です(表)。2012年の意見公募の際に明らかにした、原発に対する賛否の割合も発表していません。
意見公募は、国民の声に政府が耳を傾けることで「公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てる」(総務省ホームページ)ことを目的にしています。反論するのはあべこべです。
異様さは、手続きにも表れています。
経産省の審議会が原案を了承したのは昨年の12月13日です。ところが、意見公募は原案が初めて提示された12月6日に開始。審議会の委員には事後承諾でした。原案には、複数の委員から原発推進に強い反対意見が出されていました。完全な見切り発車です。
国際環境NGO(非政府組織)である「FOE Japan」の吉田明子さん(気候変動エネルギー担当)は、10年の基本計画改定時に全国11カ所で公聴会を開いたことと比べても、今回の意見公募は「アリバイづくりになっている」と語ります。
東京電力福島第1原発事故を受けた12年の基本計画見直しでは、市民参加型の討論型世論調査や意見聴取会が開かれました。意見公募には8万9千件の意見が寄せられ、9割が「原発ゼロ」を選択。圧倒的世論が原発に固執する民主党政権を追い詰め「30年代に原発稼働ゼロ」を打ち出させる力になりました。
安倍首相は、就任直後に「ゼロ」方針の見直しを指示。審議会からは、原発に否定的な委員の多くが排除されました。そして、今回の意見公募は年末年始を挟んで1カ月だけ。公聴会も開かれません。
吉田さんは、今回の基本計画案は12年の意見公募に寄せられた国民の声を無視するところから始められたと指摘します。同時に、当初年明けといわれた閣議決定がずれ込んでいるのは、反対世論の大きさとともに与党内でも異論が相次いでいるからだとみます。
「エネルギーという私たちの生活に深くかかわる政策決定を、明らかな民意無視のまま決めるのは間違っている」
(つづく)
数値目標ないのは
今回のエネルギー基本計画案には、前回の計画にあった再生可能エネルギーの導入目標をはじめ、数値目標が全くありません。「計画」を名乗りながら、計画になっていないのです。
理由は、原発が何基再稼働できるか分からないからです。再生可能エネルギーをどれだけ普及するかも原発しだい。基本計画案の「はじめに原発ありき」を象徴しています。ちなみに、基本計画案を承認した政府の会議の名称は、原子力関係閣僚会議でした。
(しんぶん赤旗2014年3月18日付けより転載)