地球温暖化に伴う豪雨の増加で、今世紀末の国内の洪水被害額が20世紀末の3倍程度に増える可能性があるとの将来予測を3月17日、国立環境研究所や茨城大などの研究チームが発表しました。20世紀末の被害額は年平均2000億円程度。最も温暖化が進んだ場合、21世紀末には2416億~4809億円増え、最大で6800億円程度になると見込んでいます。
温室効果ガスの濃度の変化に応じた3通りの将来シナリオと、4種類の気候変
動モデルを用いて日本の社会・経済に与える影響を予測しました。20世紀末1981~2000年)と、今世紀末(2081~2100年)の状況などを比較
しました。
最も温暖化が進んだ場合、年平均気温は3・5~6・4度上昇し、海面水位は60~63センチ高くなると予測。この結果、洪水被害額は大幅に増加すると見込み
ました。
温暖化に伴う農業分野への影響では、関東以西の温州ミカンの生産県の多くで、栽培に適した場所が今世紀末には半減すると予想しました。一方で、現在沖縄県や鹿児島県で生産されているタンカンは、最も温暖化が道んだ場合、北海道と東北を除くほぼ全県に適地が広がります。
健康面では、デング熱を媒介する蚊「ヒトスジシマカ」の分布域が北上。これに伴い、東北地方北部や北海道でも将来デング熟が流行するリスクが生じると指摘しました。
風景・風土変わる「対策は今後の課題」・・地球温暖化「日本への影響」
温暖化による日本の影響は気象災害のほか、熱中症や感染症など健康、水量や水質の変化による水道事業、コメなど作物の適地の変化など国民生活のさまざまな分野に及ぶことがわかりました。
「見慣れた景色も変わるかもしれない」・・。将来予測を発表したプロジェクトリーダーの三村信男茨城大学教授はそう指摘しました。温暖化によって日本の高山(寒帯)に生息するハイマツや亜寒帯のシラビソの占有面積は減少し、南方性のアカガシが日本に広がります。三村氏は「日本の風景、風土を大きく変え、文化にも影響を及ぼす」と話しました。
また今回、地域ごとの温暖化影響・適応策を示しました。都道府県・政令指定都市の担当者向け「適応策ガイドライン」を作成・発表しました。検討先進地として東京都、埼玉県、長野県の事例が紹介されました。
将来予測ではぜ対策(適応策)をとった際の効果も示しました。しかし、適応策のコスト(費用)は不明です。三村氏は「コストも含めた対策のあり方は今後の課題」としました。さらに、スーパー台風や集中豪雨・渇水など極端現象による最悪のケースの影響なども今後の課題です。
研究プロジェクトは、2010年度~14年度の5年間の予定で、協力も含め34機関、約140人の研究者が参加しています。
3月25日から横浜市で開くIPCC(気候変動に間する政府間パネール)第2作業部会、第38回総会は、世界規模での温暖化の影響、適応策の評価を公表する予定です。