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福島原発事故から4年・・遠い廃炉、見えぬ道筋 &県専門委員 柴崎直明・福島大学教にきく授

15-03-12tizu  東京電力福島第1原発事故が発生してから4年-。いまだに、炉心から溶け落ちた燃料の破片(デブリ)の所在さえ不明で、日々発生する汚染水への対応に追われるなど現場は困難を極めており、収束とはほど遠い状況です。汚染水問題では、地中を凍らせて地下水流入を抑制する工事は難航。タンクの汚染水処理が遅れています。しかも汚染水の海への流出が長期間放置される問題も発覚しています。
 (原発取材班)

汚染水流出続く・・対策工事は難航

 高濃度の放射能汚染水が排水路を通じて外洋に流れ続けており、東電はそれを知りながら長期間データを公表せず、有効な対策をとってこなかった-。そんな衝撃的な事実が明らかになったのは先月(2015年2月)末のことです。原子力規制委員会も「排水路の雨水は法的規制の対象外」という態度で、東電まかせにし、事実上放置してきました。汚染源は調査中です。

 一方、汚染水タンク群の近くを通る別の排水路でも同月、港湾内への高濃度汚染水の流出事故が発生、汚染源は不明のままです、港湾内の海水は、毎日半分ほどが外洋の海水と入れ替かっているとみられますが、放射性物質は検出され続けています。国の放出基準を超えるレベルの深刻な汚染状況を示す測定値も出ています。

H_4799●行き当たりばったり

 タービン建屋地下などには、汚染水が日々新たに増え続けています。これを増やさないためには、建屋への地下水流入を抑えることがカギとなります。
 国や東電が汚染水対策の。〝切り札〟と位置づける「凍土壁」は、1~4号機建屋の周囲の土を凍らせ地下に壁をつくり地下水の流入を抑制する計画です。320億円もの国費を投じるこの計画は、昨年(2014年)着工したものの工事が難航。最近になって規制委で必要性を議論し直すなど根本的な問題を抱えています。

 2、3号機地下ら海側に延びる地下トンネル(海水配管トレンチ)に流入した高濃度汚染水の存在は、海洋汚染の大きなリスク(危険)です。建屋側との連結部分を凍結止水する工事が失敗して工法の変更をするなど、行き当たりばったりの進め方です。

 東電は昨年夏、建屋周囲の井戸(サブドレン)から汚染地下水をくみ上げ、それを処理した後に海に放出する計画を唐突に発表。その後、地元や漁業者に説明してきましたが、先月発覚した排水路からの海洋汚染問題で国民の信頼を失い、議論はストップしました。

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①3号機の海水配管トレンチから高濃度の汚染水を取り出し、セメント材で埋める作業が今年2月に始まりました。 ②「凍土壁」計画で、地中を凍らせて壁をつくるための冷凍プラント建屋。 ③4号機使用済み核燃料プールでは、昨年末に全1533体の燃料の取り出し作業が完了しました。(いずれも東京電力提④汚染水からストロンチウムなどの放射陛物質を除去する高性能多核種除去設備。(代表撮影)

●東電まかせではダメ

 多核種除去設備(ALPS)による汚染水処理もトラブル多発で大幅に遅れています。

 日々新たに発生する汚染水に加え、タンクに未処理の汚染水が約25万トン残っています。ALPS増設で、ようやく未処理の汚染水は増加から減少に転じたものの、タンクの汚染水の全量処理を今月中に終わらせるとしていた当初の予定は1年以上遅れる見通しです。

 ALPSはトリチウム(3重水素)を除去できません。高濃度のトリチウムを含む処理水33万トンがタンクにあり、今後も増え続けます。これをどうするかが大きな課題です。規制委は十分な検討もせず、5年以内に処理水を海洋放出する方針を示し、漁業者・国民の反発をかっています。

 40年の廃炉工程は踏み出したばかりです。

 4号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出しは昨年末に完了しました。しかし1~3号機は高い放射線量に阻まれ、燃料デブリの状態や原子炉格納容器の破損箇所も未解明。宇宙線を利用して建屋をレントゲンのように透視して燃料デブリを探索する観測が2月に始まりました。

 現在、同原発では7000人規模の作業員が働いていますが、作業員が死傷する労働災害が相次いでいます。

 「人類が今までやったことのない作業です。とくに困難な燃料デブリ取り出しは本当にできるのかも疑問です」というのは、原発の危険性について警鐘を鳴らし続けてきた、元・日本原子力研究所研究員の舘野淳さんです。「格納容器は破損し、長期間で腐食も進むでしょう。高線量下の作業は
そう簡単にはいかない。廃炉の工程表をつくったら後は東電まかせにするという思考停止状態になってはダメです。国は再稼働を進めたいからか、廃炉の困難さをあまり言いません。国民が積極的に監視することが大切です」

 

確実な対策 積み重ねが大切・・福島県の廃炉安全監視協議会専門委員 柴崎直明・福島大学教授

15-03-12fukuokadai 事故収束は失敗が許されず、確実な対策を積み重ねることが大切です。不確実な対策があると、後から影響が出て、結局進まないことになりかねません。

甘い見通し

 海水配管トレンチを凍結して止水する計画は、実際には凍らすことができませんでした。新しいやり方で失敗して結局、在来工法でやるというのは、過酷な作業環境での労力も費用も無駄となりました。見通しが甘いと言わざるをえません。

 凍土壁の効果についても当初から規制委員会で疑問が出されていたのに、計画が先行して見通しがないままに工事を始め、実際にやってみると困難が多くて進まない。状況把握が不十分で、さまざまな対策間の相互調整もうまくいっていないのではないでしょうか。

 凍土壁計画は、埋設物を工事でぶち抜くことでそこにたまっている高濃度の汚染水が漏れたり、深い地層を通って外洋に流れ出たりするなど二次汚染が広がる危険もあります。廃炉工程で建屋に水を入れないことは必要だと思いますが、底部から水が湧出する可能性もあり、効果と問題をよく考える必要があります。

理解できぬ

 建屋への地下水流入抑制対策としては、建屋の遠くでくみ上げる地下水バイパス計画よりも、建屋近くのサブドレンからくみ上げる計画の方が効果的でしょう。ただ、サブドレンの水位が建屋の水位を下回ると、汚染水がサブドレンに逆流する危険があるので、厳格に水位管理しなければなりません。地下水が想定外の動きをしないか、二重三重の監視体制を敷くべきですが、東電の説明ではよくわかりません。

 東電は、基本的なデータを公表し、県民・国民がきっちりわかるように、今までの対策の効巣や新しい対策との整合性などを説明すべきです。排水路の流出問題などデータを迅速に公開しなかつたり、サブドレン水のくみ上げ・放出を突然言い出したりするなど、東電の体質は変わっていません。東電に当事者能力や自覚があるのか、疑わしい。

 国も「前面に出る」と言いますが、かけ声に終わっています。国は、東電を追認するだけではなく、体制を整えて対すべきです。
(聞き手・細川豊史)

(しんぶん赤旗2015年3月12日付けより転載)

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