「仮設暮らしは限界。身も心もがたがた」「いつ普通の生活に戻れるの」―。東日本大震災から4年。今なお約22万9000人が避難生活を余儀なくされています。本紙は、岩手、宮城、福島の3県で「被災者300人実態調査」を実施し、置かれた実情や要望を直接聞きました。今回で7回目となる調査ですが、避難生活が長期化するなか、健康を悪化させている人が過去最悪となるなど、事態はいっそう深刻化しています。大多数の被災者が国の支援強化を求め、安倍政権の冷たい姿勢に怒りの声が噴出しました。 (東日本大震災取材班)
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(写真)仮設団地の集会所で記者の質問に答える被災者ら=2日、宮城県石巻市
300人実態調査では、健康状態が「悪い」「やや悪い」と答えた人が58%に上り、これまでの調査で最も多くなりました。狭くて老朽化が進む仮設住宅の生活で、被災者の健康も悪化の一方です。
宮城県気仙沼市の仮設住宅に暮らす元漁師の男性(66)は、震災で生業(なりわい)を失い、ストレスと飲酒量の増加、運動不足で高血圧と糖尿病になりました。
「震災前は漁船に乗り、病気とは無縁だったのに。生活に余裕がないから(県が打ち切った)医療費免除は復活してほしい」と元漁師の男性は語りました。
健康悪化の背景には、仮設住宅の不自由な生活に加え、住まい、仕事、生業の再建の遅れで将来に展望を見いだせない状況があります。
生活再建の基盤となる住まいの問題では、63%の被災者が1年以内に仮設住宅を出る展望がないとしています。3年やそれ以上という回答も少なくありません。理由は、復興公営住宅建設や土地造成の遅れなどです。
岩手県山田町の仮設住宅で暮らす女性(74)は、「復興公営住宅に入れるまで3年はかかります。少ない年金がさらに減らされ、生活はかなり苦しい」と表情を曇らせます。
被災者が置かれているのは、憲法25条が保障する生存権が脅かされている現状です。国に求められているのは、被災者の生活・生業の再建、被災地の復興に責任を果たすことです。
「被災者の生活と生業が再建するまで必要な公的支援を行うことを復興の基本原則にすえるべきと思いますか」との問いには、「大いに思う」が63%、「少し思う」が16%で計約8割に上りました。
「大いに思う」と答えた福島県相馬市の元自営業の男性(69)は、「安倍首相がやっているのは弱い者いじめ。庶民のことがわからない政治だ」と怒りを込めました。
宮城県石巻市の仮設住宅で暮らす女性(83)は訴えます。「復興公営住宅の家賃や家具代が気がかり。国が生活再建と復興に責任をもたないと、自治体や個人の頑張りだけでは無理です」
実態調査は、記者が仮設住宅、復興公営住宅、仮設商店街などを訪ね、被災者300人(21~90歳)に直接聞き取りました。内訳は、岩手県116人、宮城県76人、福島県108人。
(「しんぶん赤旗」2015年3月11日より転載)