東京電力福島第1原発で、高濃度放射能汚染水から多くの放射性物質を取り除いた処理水を貯蔵するタンクが増え続けている問題で、原子力規制委員会は2月9日の専門家会合で、当初「2017年以降」という案が出されていた処理水の海洋放出の時期について「5年以内に実施する」という考えを示しました。
処理水の海洋放出の方針は、1月に開かれた会合で出された同原発の「中期的リスクの低減目標マップ案」に示され、了承されていました。今回、時期は未確定としながら5年以内と定めました。
9日の会合では専門家委員から、「海洋放出にあたっては科学的なアセスメント(環境影響評価)をすべきだ」「海洋放出を明記するのは時期尚早ではないか」との意見も出されました。
多核種除去設備(ALPS)で処理された水は、放射性セシウムやストロンチウムの多くが取り除かれているものの、トリチウム(3重水素)は取り除けず、含まれたまま。処理水の海洋放出には大きな問題があります。
全国漁業協同組合連合会は「漁業者、国民の理解を得られない汚染水の海洋放出は絶対に行わない」よう政府に求めています。
凍土壁めぐり、慎重判断意見・・規制委専門家会合
東京電力福島第1原発の放射能汚染水の増加抑制策の一つ、凍土遮水壁(凍土壁)について、2月9日に開かれた原子力規制委員会の専門家会合で、委員から工事や運用にあたっては慎重な判断や情報開示を求める意見が出されました。
東電は、凍土壁の凍結開始後に原子炉建屋にたまっている汚染水の水位が周辺地下水の水位を下回るよう管理する方針について説明しました。
これに対し、専門家委員から、建屋の四方を囲む凍土壁のうちの海側の部分は凍結しても効果が低いのではないかと指摘。更田豊志委員も、海側については、建屋周辺の井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げ、放射性物質の処理後に海洋放出する計画の稼働後にその効果を見てから検討してもよいのではないかと述べました。
凍土壁の海側部分の効果について東電は、放射性物質の建屋からの漏えいリスクを減らし、サブドレン計画への漁業者の理解を得ることにもつながると述べました。
専門家委員からは、「凍土壁の山側部分が凍結開始した後に、水位や地下水の流速のデータを開示してほしい」との意見も出され、東電は「情報を示しながら進めたい」と答えました。
(「しんぶん赤旗」2015年2月11日より転載)