福島県いわき市民が国と東京電力を相手に原発事故被害の完全賠償を求め、「元の生活をかえせ・原発事故被害いわき訴訟」に取り組んでいます。3月19日の第4回口頭弁論では、第1次原告の4人が意見陳述しました。伊東達也原告団長に、裁判の状況と意義を聞きました。
(福島県・野崎勇雄)
2人の小さな子を持つ母親は、大震災直後に妊娠の兆候を感じたものの、仕事の関係や、ガソリンがなくて避難できず、胎児への影響を考え不安でたまらなかったことを切々と語りました。そして「妊婦だった人の気持ちを分かってほしい」と訴えました。
原発事故当時4ヵ月の子がいた母親は「2ヵ月、家族ばらばらの避難生活で、心身とも疲れた。加害者側が一方的に決めた賠償には納得できない」といいます。高齢者、精神障がい者施設の役員も、社会的弱者の大きな負担を陳述しました。
約1400人の原告団
これまで4回の口頭弁論で、原告16人が意見陳述。年齢、職業、体験がみんな違っていて、原告団約1400人を代表するような意見陳述になったのではないでしょうか。
訴訟の内容は損害諭と責任論です。
まず「損害論」です。東電は、避難区域外のいわゆる低線量放射能被害を受けた地域の住民(妊婦と18歳以下の子ども以外)の精神的損害は、原発事故が起こった2011年3月11から4月22日までの43日間しか認めていません。
これは事実に反しています。損害はずっと続いているし、健康問題についての精神的不安や苦痛をまったく考慮せず、「地域力」が低下したところに住まざるをえません。これは東電が賠償の必要性を認めた23市町村約150万人に共通しており、私たちは、いわき市民だけでなく県民全体の代表だと自覚して訴えました。
被災者支援策を
次に「責任論」ですが、東電の答弁は「津波や地震は想定外であり、不法行為責任はない」というものです。不法行為とは故意または過失によって他人の人権を侵害し、損害を与えるということであり、それを認めません。まったくひどい態度です。
これについては多くの専門家が指摘し、批判しています。国会と政府の事故調査委員会の報告書でも不法行為を認めています。
私たちは、不法行為を認める判決を求めます。それを土台にして政策形成、つまり被災者の全面的支援を内容とする施策の実現を、国、東電に迫りたい。
元の生活をかえせ・原発事故いわき訴訟
いわき市民822人が2013年3月11日、福島地裁いわき支部に提訴した集団訴訟。第2次が加わり、1395人の大型原告団となりました。訴訟では、被災者の損害賠償とともに、子どもたちの生涯にわたって健康を維持するための適切な施策の確立など、5項目の政策実現を求めています。