関西電力、中国電力、九州電力、日本原子力発電は、2016年7月までに運転開始から40年を超える老朽原発5基を廃炉にする方向で、月内にも地元自治体との調整に入ります。廃炉に伴う電力会社の負担を軽減する会計ルールが固まったことを受けたもので、立地地域の雇用確保策などについて地元と協議した上で今年度内に廃炉を正式決定します。
5基は、関電美浜1、2号機(福井県)▽中国電島根1号機(島根県)▽九電玄海1号機(佐賀県)▽原電敦賀1号機(福井県)。
原発の運転期間は、13年7月施行の改正原子炉等規制法で原則40年に制限されました。原子力規制委員会の認可を得れば最長20年の延長が可能ですが、設備劣化の状況を調べる「特別点検」を実施した上で、運転期限の1年前までに規制委に申請する必要があります。
原発廃炉の費用10年で分割処理・・経産省作業部会
経済産業省の有識者作業部会は1月14日、原発の廃炉に関する会計処理の報告書案を大筋で了承しました。廃炉決定に伴い、一度に巨額の損失を計上する必要がある現行の会計制度を見直し、損失を10年で分割処理できるようにすることが柱です。電力会社の負担を軽減することで、老朽化した原発の廃炉を後押しし、比較的新しい原発の再稼働につなげる狙いがあります。
経産省は関連省令を改正し、今年度内に施行します。現在の制度では、廃炉作業に必要のないタービンなどの発電用資産や核燃料は、廃炉決定で資産価値がゼロになります。経産省は運転開始から約40年の原発について、電力会社に1基当たり210億円の損失が発生すると試算しています。
また、電力会社は電気料金算定の原価に廃炉費用を含めていますが、2018〜20年をめどにこうした方式は廃止されます。報告書案は、廃炉費用を将来も安定的に確保できるようにするため、電力小売会社が負担する送電網の利用料金に開運コストを転嫁できる仕組みも示しました。幅広い利用者に負担を求めることにつながるため、慎重な制度設計が必要になりそうです。
(「しんぶん赤旗」2015年1月15日より転載)