東京電力は3月24日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水から放射性物質を大幅に減らす装置「ALPS(アルプス)」の3系統のうちB系統で性能が大幅に低下し全系統の運転を停止している問題で、フィルターに不具合があった可能性が高いと発表しました。不具合の原因は不明のままですが、東電は、汚染箇所の浄化のためA、Cの2系統の運転を6日ぶりに同日午後1時ごろ相次いで再開しました。
アルプスは、原子炉建屋地下などにたまった高濃度放射能汚染水を放射性セシウムや塩分などを減らす装置を通した後に残った汚染水から、トリチウム(3重水素)以外の62種類の放射性物質を国の濃度限度以下に減らすことができるとしている装置です。東電は「汚染水対策の切り札」だとして、アルプスで処理した汚染水の海への放出を狙っています。
現在、3系統とも試験運転中ですが、B系統では17日に処理後の汚染水を採取して分析したところ、ストロンチウム90などベータ線を放出する放射性物質の濃度(全ベータ)の値が1リットル当たり数千万ベクレルと、処理前の汚染水より一桁低いだけで大幅な性能低下が起こっていることが確認されました。このため、東電は18日に3系統とも運転を停止して原因を調べています。
東電によると、アルプスでは前処理の段階で汚染水をフィルターでろ過して吸着塔でストロンチウム90を除去するときの効率があがるようにしているといいます。しかし、B系統ではフィルターが不具合だったためストロンチウム90などの放射性物質の除去性能が低下したとみられるとしています。
B系統では吸着塔で異常な現象が起こっていたため、フィルターを3月上旬から中旬にかけ交換。フィルターの不具合の原因は調査中だとしています。
アルプスの試験運転で処理した汚染水はタンクに貯蔵していますが、B系統の放射性物質を「取り切れない」汚染水が貯蔵済みのタンクに流れ込みました。東電は24日の会見で21基中9基のタンク、6300トンが汚染されたことを明らかにしました。
トリチウム濃度11倍に・・採取の地下水
東京電力は3月23日、福島第1原発で2月に高濃度の放射性物質を含む汚染水約100トンがせき外へ流出したタンク近くで、22日に採取した地下水の放射性トリチウム(3重水素)濃度が1リットル当たり4600ベクレルに上り、21日の11倍に上昇したと発表しました。東電は「汚染水の影響と考えられるが、引き続き状況を見ていく」と話しています。
東電によると、採取した場所は汚染水が流出したタンクから東に約60lメートルの場所。21日に採取した地下水の濃度は同410ベクレルでした。
政府と東電は、今回の採取場所の北東方向にある井戸から地下水をくみ上げ、海へ放出することを計画しています。