全国の原発再稼働の突破口として再稼働の手続きがすすめられている九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)への火山の影響が、懸念されています。規制基準に「適合した」とお墨付きを与えた原子力規制委員会の川内原発1、2号機の審査書は、「火山ガイドを踏まえていることを確認した」としています。しかし、静岡大学の小山真人教授(火山学)は、ガイドや審査の問題点を指摘します。
(松沼環)
—原発への火山影響評価の妥当性を判断する際に参考にする「火山影響評価ガイド」そのものに問題があると指摘していますね。
体をなさない
小山 ガイドでは、設計では対応できない火山事象に、火砕流や溶岩流などを挙げています。さらに、そうした火山事象が、原発の運用期間中に「影響を及ぼす可能性が十分小さいと評価できない場合」は立地不適とされています。
しかし、何を持って「可能性が十分小さい」と判断するのか、その基準が定量的に示されていないことが問題です。曖昧で恣意(しい)的な判断がいくらでもでき、ガイドの体を成していません。
例えば、同様に原発審査で用いられる「地質・地質構造調査に係る審査ガイド」では、12万〜13万年前以降に動いたことが否定できない断層の露頭の上には原発は建てられないことになっています。
ですから、火山の影響についても12万〜13万年前以降に火砕流が達した原発は、立地不適とすべきではないでしょうか。
—川内原発の審査の中で、火山による影響の評価方法が不適切と指摘していますね。
小山 九電は、「ガイド」に基づいて、原発から160キロ圏内で、影響を及ぼしうる火山を抽出しています。この圏内には、噴火規模を分類する火山爆発指数で7以上となる「破局的噴火」を過去に引き起こした五つのカルデラ(火山によるくぼ地)が存在します。
根拠ない評価
九電は、このうち始良(あいら)、阿多(あた)、加久藤(かくとう)・小林の3カルデラを合わせた階段図(図)を作成し、カルデラ噴火の再来間隔が9万年程度と評価しています。さらに、3カルデラの最新の破局的噴火(約3万年前)から経過した時間に比べて、再来間隔が十分長いので、原発の運用期間中(数十年)に破局的噴火が起きる可能性は「十分低い」といっています。
しかし、この評価の仕方は大変おかしい。噴火間隔が9万年にそろうカルデラの組み合わせを選んだようにみえます。同じく160キロ圏内にある鬼界(きかい)や阿蘇カルデラを加えると、話が大きく変わってきます。九電自身も鬼界を加えた場合、周期性がなくなることを認めています。
そもそも、別のマグマ溜(だま)りと考えられている複数のカルデラを合わせて一つの階段図にした火山学的な根拠が不明です。
階段因は、長期的なマグマの供給率や噴出率を見積もるために用いられます。通常、九電がやったように活動の間隔を議論するものではありません。
(つづく)
火山爆発指数・・
火山の爆発規模を噴出物の量で0〜8に分類した指数。最大の8では、噴出量が1000立方キロ以上。この規模の噴火は、7万4000年前のトバカルデラ噴火(インドネシア)などがあります。7
は、100〜1000立方キロ。日本国内でも、約7000年前の鬼界アカホヤ噴火や約3万年前の姶良カルデラ噴火、約11万年前や約25万年前の阿多カルデラの噴火などで、たびたびこの規模の噴火を経験しています。9万年前の阿蘇カルデラの噴火では、高温の火砕流が半径150キロを襲い、火山灰は北海道の網走15センチの厚さで積もりました。
(「しんぶん赤旗」2014年12月22日より転載)