日本火山学会の秋季大会が11月2日、福岡市内で開かれ、静岡大防災総合センターの小山真人教授は、九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査を「楽観的過ぎる」などと批判しました。
小山教授は大会の講演で、審査で焦点となった巨大噴火の予測について、「現代火山学はほとんど知見を持っていない」などと説明。規制委は監視を強化すれば前兆の把握は可能と判断しましたが、「楽観的過ぎる」と指摘し、噴火の数年前に予測することは不可能との見方を示しました。
同教授はまた、周辺火山の噴火による降灰を、九電が多くても15センチと想定していることを挙げ、風向きによっては原発周辺に1メートル程度積もり得ると、問題視しています。
川内原発がある九州南部には、過去に巨大噴火が起きたことを示すカルデラ(巨大なくぼみ)が複数あり、九電も原発敷地内に火砕流が到達した可能性を認めています。火砕流が原発を襲えば機器が破壊され、核燃料を冷却できなくなる恐れがあります。
噴火災害情報の共有不足を指摘・・緊急シッポ
日本火山学会は11月1日、戦後最悪の火山災害となった御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火から防災面の教訓を探るための緊急シンポジウムを福岡市で開きました。パネル討論に参加した研究者らは、関係機関による防災情報の共有が不足していた実態を報告し、火山噴火に備えた連携体制の整備を訴えました。
名古屋大学地震火山研究センターの山岡耕春教授は、9月27日の御嶽山噴火直後の対応について、名大内部のミーティングでも災害防止にまで話が及ばず、気象庁や地元自治体との間で噴火活動の見通しや防災に関する意見交換を行わなかったことを反省点として挙げました。
国立保健医療科学院(埼玉県和光市)の石峯康浩上席主任研究官は東京都立川市にある災害派遣医療チーム(DMAT)事務局がテレビ報道で初めて御嶽山噴火を知ったことを明らかにし、マスコミやインターネットの情報を頼りに活動していたのが実態だと報告。地元の災害医療コーディネーターなども交えて実効性の高い火山避難計画を作成することや噴火災害時の死因究明手順を早急に明確化することを訴えました。
産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の及川輝樹主任研究員は、現在の防災体制は火山噴火が段階的に起きることが前提になっていると指摘。突然の噴火に見舞われることが避けられない以上、登山者自身もリスクを把握した上で行動することが必要だと述べ、火山ごとに登山者向けの防災マップを作成することを提案しました。
(しんぶん「赤旗」2014年11月3日付けより転載)