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福井豪雨1カ月 はがされたままの床板‥「補助金などもっと支援ほしい」

泥に漬かった漆器を前に「夫婦だけでは、片付けられない」という卸業の男性(76)=15日、福井県鯖江市
泥に漬かった漆器を前に「夫婦だけでは、片付けられない」という卸業の男性(76)=15日、福井県鯖江市

死者三人を出した福井豪雨から十八日で一カ月になりました。二人が今も行方不明のまま。被災者はどんな生活をしているのでしょうか。再び被災地を訪ねました。東海北陸信越総局・唐沢俊治記者

地場産業の「越前漆器」で有名な鯖江市河和田地区も豪雨の被害を受けました。年間出荷額は約八十億円、業務用漆器では全国約八割のシェアを占めます。一カ月がすぎても、泥に漬かった漆器がそのままの卸業者や、仕事を再開できない職人がいました。

漆器にほこりは

「ほこりっぽいところじゃだめなんや」と、自分に言い聞かせるように話すのは井上清孝さん(40)=河和田町=。漆塗りは、ほこりやちりのない所でしなければなりませんが、床下の泥を除去するために工房の床板を取り払い、張り替えたばかり。八月納期だった四、五十万円の仕事はほかの職人に回されたといいます。仕事を再開できても「取引先は、本当に仕事をくれるかどうか分からんのう。まずは生活を戻さんと」。一カ月前と同じ答えが返ってきました。

「漆は職人にとって命と同じくらい大切。漆器は分身みたいなもんだ」と話すのは、親子三代続く職人歴五十年の男性(70)=同=。被災した自宅を一部取り壊すため電力会社と打ち合わせする慌ただしい中、日焼けした腕を組んで話します。越前漆器など伝統的工芸品の被害には福井県から上限三百万円の補助金が出ますが「(被害額は)四、五百万円くらいかな。上限のない補助金などもっと支援をしてほしい」。

2階で生活続け

福井県全体で四千世帯以上が床上浸水、うち三千世帯は福井市。足羽(あすわ)川堤防が決壊した同市春日地区は被災直後、道は泥でぬかるみ家具が山のように積まれていました。今は撤去され、一見して平穏なお盆を迎えた様子。しかし、住宅に入ると一階は泥をかき出すため床板がはがされたままで、二階で生活する住民も多くいます。

「一カ月たっても何も変わってないですよ」と、堤防決壊地から約百メートルの住宅に住む女性(60)。浸水で使えなくなった洗面台を新しく造る夫を手伝います。床上浸水の家庭には最高五十万円の補助金が出ますが、床の工事代や使えなくなった電化製品を考えると「(五十万円は)ゼロが一つ足りないですよ」。

特に被害が甚大だった美山町では十七日現在、七十一人が仮設住宅で生活しています。息子夫婦が仮設で暮らしはじめた吉村清春さん(80)=蔵作=は「生まれ育った土地ですから住みつづけたい」とあえて自宅で暮らします。車四台が流され、十七アールの田畑も土石流で跡形なく侵食されました。家の中まで大量の土砂が入り「避難する時間が遅ければ助からんかった。今は健康でいいけど、年金生活だからこれからどうなるか」と不安な表情で話していました。

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