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問われる監視・観測体制・・世界有数の火山国・日本で、関連予算少なく

白煙を上げ続ける御嶽山の噴火口=9月28日正午(時事通信社ヘリから)
白煙を上げ続ける御嶽山の噴火口=9月28日正午(時事通信社ヘリから)

関連予算、政党助成金より一桁少なく

 火山災害として戦後最悪の犠牲者を出した御嶽山の噴火。世界有数の火山国・日本で、これから火山活動の活発期に突入する可能性が指摘されるなか、観測機器の維持や充実だけでなく、専門家の育成さえ危ぶまれる状況があります。その噴火監視体制の不十分さにたいして、早くから疑問の声があがっていました。

(内田達朗、中村秀生、松沼環)

 

 日本には110の活火山があります。そのうち47火山は、火山噴火予知連絡会によって「監視・観測体制の充実等が必要な火山」に選定され、24時間体制で常時観測・監視されています。

 2011年の東北地方太平洋沖地震によって、日本と周辺の地殻の状態が変化し、各地で活発な火山活動が発生する可能性があります。現在の日本は、貞観地震(869年)前後に伊豆諸島、富士山、鳥海山、新潟焼山などの噴火が続いた9世紀の状況に似ているという指摘もあります。

■年間十数億円で推移

 まさに今、火山防災は待ったなしの課題です。ところが防災のための大前提となる監視観測や調査研究は、不十分です。

 昨年5月に内閣府などの有識者検討会がまとめた「大規模火山災害対策への提言」は、科学技術・学術審議会が建議する観測研究計画にもとづき大学が実施する火山噴火予知研究の予算が年間1億円程度にすぎず、「噴火シナリオの作成に欠かせない噴火履歴の調査等には十分な予算が投入できない」と窮状を訴えました。

 文部科学省の資料によると、国の火山関連予算の総額は、最近20年間は大ざっぱにみて年間十数億円規模で推移しています(09年度以後の予算は地震と火山を合算しており内訳は不明)。これは米軍への「思いやり予算」(2000億円規模)より二桁小さく、憲法違反の政党助成金(350億円規模)より一桁小さい額です。

 提言は「(常時観測の)47火山でさえ必ずしも観測体制が充実しているとは言えない状況」だと指摘しています。実際、気象庁によると、47火山のうち、地震計が1つしか設置されていない火山が複数カ所あります。

 一方、04年の国立大学法人化にともなって国の予算が削られてきた結果、技術職員の削減で大学の観測所が無人化されたり、観測機器の維持が困難な状況も生まれました。

■学者はイタリアの30分の1

 深刻な事態は、現在の問題にとどまりません。人材の欠乏が将来の火山監視体制に暗雲を投げかけています。

 現在、大学で火山観測などに従事する研究者は40人程度。火山学で博士課程に進む学生の減少も顕著です。

 火山活動の推移や発生する現象の予測にとって、個々の火山活動のくせを知ることが重要。そのためには火山ごとの ″ホームドクター″(かかりつけ医)が欠かせません。

 ところが、日本の1火山あたりの研究者の数は0・36人。イタリアの10・7人、インドネシアの0・85人、米国の0・83人と比べて見劣りする数です(今年3月、防災担当相の国会答弁)。

 今回の御嶽山の噴火は比較的小規模とされていますが、多数の犠牲者を出しました。日本各地では歴史的にさらに大規模な噴火による災害に見舞われてきました。火山国・日本で将来の噴火への備えの充実が急がれます。

 

今こそ人員・設備の拡充を

 火山観測を行う現場からは、人員体制の充実を求める声が上がっています。

 気象庁の火山の観測は、東京にある本庁と三つの管区気象台が担当しています。各地の火山に地震計、観測カメラなどを設置していますが、気象庁職員は常駐していません。各地の管区気象台では、5人の職員が24時間2交代で、地震計などのデータやカメラの映像をもとに観測を続けています。

 災害発生時などは、観測に従事していない職員などの応援を受けて対応しています。しかし、政府は7月、今後、気象庁職員の定員を1割削減する方針を決定しました。

 人員体制の充実を求めている国土交通労働組合の安藤高弘委員長は、「人員が不足しているのが現場の実態です。職員が減らされれば、正しい観測に必要な経験・知識が継承されず、国民の安全を守ることができなくなります。今こそ人員・設備の拡充が必要です。労組としても体制の充実へ引き続き声を上げていきたい」と話しています。

 

共産党は一貫して充実要求

 日本共産党は、火山監視観測体制の充実を国会で繰り返し求めてきました。

 仁比聡平参院議員は2009年、文科省が国立大学の重点観測対象火山数を大幅に減少させようとしていることを批判し、「火山にはそれぞれ個性、特徴がある。だからこそ、それぞれの常時観測、研究とその成果を防災行政に活用することが求められる」と指摘。「大学の観測体制を抜本的に強化するために予算を確保することが国の責任」と求めました。

 2011年12月には、政府にたいして観測体制の強化や研究機関への財政支援、人材育成などを求めた国会決議が超党派で提案され全会一致で可決されています。政府の責任は重大です。

 

御嶽山・・3ヵ所で地震計ストップ

 気象庁によると、御嶽山の火山活動監視は13カ所に設置した地震計などによって行っています。このうち気象庁の地震計は2ヵ所。1カ所で、地表に設置され、強風による雑音が問題となっていました。このため2ヵ所目は、地下に地震計を埋設しました。

 このほか、長野県が3ヵ所、岐阜県が2ヵ所、名古屋大学などが地震計を設置して、観測体制をしいていました。

 しかし、御嶽山の観測体制について詳しい東農地震科学研究所の木股文昭副首席主任研究員は、「火山の場合、精度が1キロぐらいは欲しい。現在は、密度が十分ではなく、地震の回数はわかるが、どこに起きているか、どの深さか非常に曖昧だ」と指摘します。

 しかも、噴火当時、両県が設置した5ヵ所のうち、長野県が山頂に設置した1カ所を含む、3ヵ所の地震計が動いていませんでした。

 長野県によると、県が設置した3ヵ所のうち2ヵ所が老朽化により昨年6月と8月から停止していました。名古屋大学が機材を提供し、今年10月にも更新する計画を進めていたところでした。岐阜県が設置した2ヵ所のうち1ヵ所は、電源を供給しているスキー場の電源が夏季には停止するため停止していました。

 木股氏は、「予知できたかは別として、山頂の地震計が動いていれば、予知につながる一つのステップを進めた可能性があります。3000メートルを超える御嶽山で、県が地震計を維持するのは困難です。大学もひっ迫していて、観測網の維持が困難な状況です。国の責任で整備すべきです。火山地域にある測候所を廃止するなど、国は火山活動監視から大きく後退しています。地域の切り捨ての一環として、火山も切り捨てられている」と懸念を示しています。

(「しんぶん赤旗」2014年10月4日より転載)

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