安倍晋三政権が世界に売り込んでいる日本の石炭火力発電をめぐり、インドネシアのバタン石炭発電建設計画が注目を集めています。
■地元住民が反対
総事業費は約40億ドル(約4400億円)。ジャワ島中部のバタン県に200万キロワットの石炭発電所を建設する計画です。事業実施者のビマセナ・パワー・インドネシア(BPI)は、日本の伊藤忠商事と電源開発、インドネシアのアダロ・パワーが設立した現地法人です。
融資調達額の6割にあたる16億ドルを日本の国際協力銀行(JBIC)が、11億ドルを民間銀行団が融資する予定です。2012年8月に結ばれたつなぎ融資契約の融資額トップは三井住友信託銀行の1億3500万ドル。三菱東京UFJ(6200万ドル)、三井住友、みずほ(ともに1800万ドル)の3メガバンクも名前を並べます。
計画が発表されたのは11年6月です。当初は12年秋を融資調達期限とし、16年末に1号機を稼働させる予定でした。地元住民の強い反対によって融資の前提となっている用地確保が進まず、BPIは融資期限を2年連続で延長しました。今
月6日に3度目の融資期限を迎えます。
石炭発電へのJBICの融資は世界でも突出しています。「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝氏は、03〜14年の間にJBICは23件の石炭発電事業に投融資してきたと指摘。「一度石炭発電を建設すれば数十年にわたって大量の温室効果ガスが排出される。再生可能エネルギーなど代替エネルギーヘの転換も遅れる」と語ります。
安倍政権は、日本企業の国際競争を支援するため、JBICや日本貿易保険(NEXI)による公的金融支援を強化するとしています。
9月に来日したバタン石炭発電の建設に反対する地元住民のリーダーらは、建設による環境への影響を口々に語りました。
■豊かな再生エネ
グリーンピース・東南アジア・インドネシアのアリフ・フィヤント氏は、バタン石炭発電が建設されれば09年のミャンマー全体の二酸化炭素(C02)排出量と同じ年間1080万トンのCO2が排出されることになると強調します。
「バタン石炭発電が気候変動に重大な影響を与えることは間違いない。気候変動は東南アジアにとって最大の脅威だ。インドネシアは特に影響を受けやすく、対応が遅れている国の一つだ」
水銀汚染の影響も深刻です。「グリーンピースの試算では、発電所から年間220キロの水銀が海洋に排出される。漁民だけでなく、その魚を食べる地域住民にとっても重大な脅威だ」(アリフ氏)
住民リーダーの1人ロイディ氏は、毒性ガスによる健康被害を心配します。「既にある石炭発電の周辺では、住民が肺など呼吸器系の病気に苦しんでいる。同じことを繰り返したくない」
アリフ氏は、インドネシアの1万7000の島には、どこでも豊かな再生可能エネルギーがあると語ります。「豊富な地熱や太陽光に加え、東ヌサトゥンガラ州やパプア州では風力、ジャワ島やスマトラ島、スラウェシ島では小水力発電の可能性がある。石炭を選択する必要はない」
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2014年10月3日より転載)