新型フィルターでもトラブル
福島第1原発の高濃度放射能汚染水から放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPS)が再三のトラブルで運転停止している問題は、ALRSの不安定性と汚染水処理の難しさをあらためて示しています。
トラブルは、ALPSの3系統の一つのB系統で発生。汚染水処理の過程で発生する炭酸塩(炭酸カルシウムなど)をろ過するフィルターの1つから系統下流側に炭酸塩が漏れていることが9月26日にわかりました。炭酸塩が混じっていると放射性ストロンチウムの除去に支障が出ます。
フィルターは、放射線による劣化が問題になったために耐久性があるとして替えた新型で、トラブルは初めて。
東京電力は9月29日の会見で、炭酸塩か漏れた原因はまだわからないと説明。点検と調査などを行い、フィルターが一つ少ない状態で10月下旬の仮復旧をめどしますが、処理能力は下がります。現在フィルターの予備がなく、本格復旧に2ヵ月程度かかるとしています。
第1原発には現在、約36万トンの高濃度汚染水がタンクに保管されており、国や東電はALPSを汚染水対策の″切り札″として位置付けています。ALPSはこれまで腐食や本来の処理性能が出ないといったトラブルが相次ぎ、安定した運転ができていません。
一方、東電は同日、増設したALPSのA〜Cまでの3系統のうちB系統で、実際に汚染水を通して浄化機能をチェックする試運転を開始。C系統も10月上旬に試運転を始めたいとしています。いずれも今回トラブルが起きたものと同じフィルターが使われており、影響が懸念されます。
(細川豊史)
(「しんぶん赤旗」2014年10月1日より転載)