2012年7月の自然エネルギー固定価格買取制度の施行から2年で、太陽光発電は2・5倍に増える一方、大規模太陽光発電所への住民の反対運動がおきるケースもあります。バイオマス発電は増加の兆しが見えていますが、風力・小水力・地熱はこれからです。
普及するには住民参加が要
自然エネルギーが住民に受け入れられ普及するには、実害の軽減、意思決定への住民参加、利益の地元還元と地元雇用の創出が重要です。市民・地域の主体による共同発電所はこの全てを満たしやすい取り組みとして注目されています。
ただ、いざ具体化となると技術課題に加えて資金調達や電力会社との協議などのハードルがあります。今回紹介する本はそれらに実際の市民・地域共同発電所がどう取り組んだかの具体的な経験に満ちています。
和田武ほか編著『市民・地域共同発電所のつくり方 みんなが主役の自然エネルギー普及』(かもがわ出版・1700円)は、千差万別の九つの共同太陽光発電所を紹介し、どうやって事業を運営し、何千万円という資金を集めたかを生きいきと描きます。
買取期間20年間の毎年の収支見通しの立て方や事業のリスクと保険など、事業を実際にプランニングして実施する上でのノウハウが詰まっています。地元の農産品や魚を出資者に送る、地域振興券で配当、収益金で地域振興基金を創る。地元企業に維持管理を委託するなど、地域活性化の取り組みもさまざまです。
農林業に収益地域が豊かに
田畑保著『地域振興に活かす自然エネルギー』(筑波書房・2000円)は、長年農村を調査してきた著者が、自然エネルギーの普及をどう地域振興に生かすのかという視点から、多くの実践例をまとめた本です。この本の特徴は、小水力発電とバイオマス発電に多くのページを割き、その中での農業・林業や土地改良区などの地域主体の具体的な取り組みを紹介していることです。
特にバイオマス発電では、間伐材や製材くず、家畜の糞尿などを、その「燃料」として供給することで、農林業の継続的な収益になり、そのお金が地域を豊かにすることから、自治体も積極的に参加しています。
小石勝朗・越膳綾子編著『地域エネルギー発電所事業化の最前線』(現代人文社・1800円)は10の地域発電所の取り組みと、脱原発首長たちの声を紹介しています。特に長崎県小浜温泉で過去に地熱発電反対で活動していた温泉事業者がいま温泉発電に参加している事例は、地元主体でこそ自然エネルギーがスムーズに受け入れられることを端的に示しています。
固定買取制度の縮小・廃止を許さないためにも、地域発の事業を各地で進めることが求められています。
(さがわ・きよたか 自然エネルギー研究者)
(「しんぶん赤旗」2014年9月21日より転載)