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東日本大震災3年半 被災地の願い(4)・・〝防潮堤建設前提〟に異議

毎抜3・1メートルの防潮堤から1・2メートルのかさ上げが計画される宮城県東松島市新東名地区の長石海岸。飴屋善太さんは、かさ上げありきで進む県の計画を批判します=9月2日
毎抜3・1メートルの防潮堤から1・2メートルのかさ上げが計画される宮城県東松島市新東名地区の長石海岸。飴屋善太さんは、かさ上げありきで進む県の計画を批判します=9月2日

 建設ありきの防潮堤計画-。宮城県では行政が防潮堤の建設やかさ上げを前提に住民説明会を行う例が目立ちます。その中で住民がよく話し合い、「防潮堤はいらない」との結論にたどりついたり、住民から新たな緑の防潮堤を提案するケースも生まれています。

 同県気仙沼市本吉町前浜地区。市の管理漁港の同地区前浜漁港に海抜9・8メートルの防潮堤計画が示されたのは昨年(2013年)10月でした。小さな漁港の背後に半傾斜の防潮堤を2カ所新設する計画で、陸側の高さは最大3・6メートルになります。

納得いくまで

 東日本大震災の津波で38世帯が全壊した同地区では、防潮堤建設に賛否が分かれました。「納得するまで話し合うことが大事」と住民主体で勉強会を開催。7月末に開いた9回目の勉強会「防災減災を考える意見集約会」で「コンクリートの防潮堤はいらない」との結論にたどりつきました。防潮堤に代わり、避難路の整備や盛り土、自然の地形を生かした面的防御で対応するとしています。専門家の意見も取り入れ、市へ要請する予定です。

 前浜地域振興会会長の菊地敏男さん(66)は、「自分たちの地域をどう残したいか考えれば、答えは一つになると思ってやってきました」と話します。

 宮城県が海抜6・8メートルの防潮堤を計画する七ヶ浜町・表浜。砂浜の背後に長さ約300メートルのコンクリートの防潮堤を建設する県の計画に対し、住民が防潮堤を陸側に移動させ、盛り土をした上に樹木を植える「緑の防潮堤」を提案しています。

 これは同町のNPO法人「七ヶ浜の100年を考える会」が地元や仮設住宅の住民に行ったアンケートを踏まえたもの。アンケート結果は、コンクリートの防潮堤は14%にとどまり、自然林防潮堤が38%で、県道かさ上げ27%が続きました。

選択肢がない

 考える会代表の稲妻公志さんは、「県の計画は一律で選択肢がない。行政が複数の選択肢を示すことで住民は費用対効果も含め選択できます。海岸によって特徴が異なるので、その海岸にあった防潮堤のあり方があるはずです」と話します。

 緑の防潮堤は各地で提案され、仙台市宮城野区蒲生(がもう)では中高生が自然の干潟を生かし、内陸部に緑の防潮堤をつくる計画を提案しています。

 しかし、県の〝防潮堤建設ありき″の姿勢はなかなか変わりません。

 「かさ上げのためのこじつけた理由としか思えない」。こう話すのは同県東松島市新東名地区のNPO法人「創る村」の飴屋善太さん(27)です。

 県は、同地区長石海岸の海抜3・1メートルの防潮堤を1・2メートルかさ上げする計画です。当初、西側の松島湾からの津波に備えるためと説明。しかし、震災の津波は、東に約2キロ離れた太平洋側の野蒜(のびる)海岸から陸を越えて背後から同地区を襲いました。

 防潮堤が高くなることで水が抜けなくなる危険を指摘する飴屋さんらに対し、県は〝高潮を防ぐため″との理由をあげてきたのです。

 飴屋さんは話します。「県は〝高潮の波しぶきから家屋や農地を守る″というが、当初の〝住民の生命・財産を守るため″という趣旨からも外れているのではないか」

(つづく)

(「しんぶん赤旗」201年9月14日より転載)

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