出席者
岩手県 斉藤 信県議・・建築費増え国の支援必要
宮城県 横田有史県議・・水産特区の会社は大赤字
福島県 長谷部淳県議・・生業再生といえない状況
-すでに話も出ていますが、住宅と生業(なりわい)の再建についてお話しください。
斉藤 土地、建築資材、人件費の値上がりで震災前と今を比べると、坪10万円の建築費が増えていて、30坪の家を建てる場合、300万円ほど余計にかかります。国の被災者生活再建支援制度で住宅再建への支援は、最大で300万円ですから、値上がり分でとんでしまいます。岩手では県と市町村でさらに200万~300万円程度、支援していますが、国の制度として500万円まで引き上げることが必要です。
災害公営住宅は岩手の場合、1戸あたり平均1970万円かかっています。被災者の持ち家支援を強化するべきです。
■仮設にガタ
横田 宮城の仮設住宅はプレハブ協会に丸投げされて、1戸1300万~1400万円でつくられました。3年半たってガタがきて、改修が必要になっています。最初からしっかりした住宅をつくった方がいいという指摘も出ています。災害の住宅対策は仮設住宅、災害公営住宅、長期の住宅という流れで考えられてきました。大震災時の住宅のあり方は、今回の震災を教訓に整理する必要があると思います。
■二重ロ-ン
斉藤 持ち家建設の課題は四つあると思います。資金、土地の確保、二重ローン、時間がかかりすぎることです。二重ローンについていうと、被災者救援の「私的整理ガイドライン」(注1)にそって申請された1027件のうち債務整理の見通しのたったのは353件、34%です。「ガイドライン」が十分機能してない。見直しが必要です。
災害公営住宅建設は今年度(2014年)でようやく29%が完成するペース。昨年21%が入札不調に終わりました。東京五輪もありますが、復興優先にしてもらわないと遅れが拡大します。
■再開は29%
長谷部 生業についていいますと、避難指示区域所在商工会の事業再開は、双葉郡内は基本的に避難地域ですから地元での再開は12%です。双葉郡以外では、事業再開は65%ですが、そのうち地元での再開は29%にとどまっています。生業再生といえる状況ではありません。
被災中小企業を支援するグループ補助金(注2)は3131社が利用し喜ばれていますが、福島の場合、原発事故による避難で地域の結びつきが崩れ、グループをつくりにくいという面もあります。
斉藤 グループ補助金と仮設店舗の果たす役割は大きいと思います。ただ今は、区画整理や高台移転が追いついていないので、店を出す土地がなく、グループ化補助金の申請は少ない。2、3年後が本当に必要になる時期で、そこまで制度を続けなくてはいけません。産業再生、雇用確保なくして復興はできませんから、ここは非常に重要な点です。
横田 宮城県は水産特区(注3)ということで、無理やり会社をつくりましたが、1年たって大赤字という実態です。グループ化補助金も3721業者が適用されましたが、実際に活用して事業化できたのは2480業者、67%にとどまっています。
宮城の基幹産業は農業と水産業です。排水施設整備が約7割で、3割の田畑がまだ使えない。漁港にいたっては23%しか本格復旧しておらず課題は山積しています。
(つづく)
注1 私的整理ガイドライン 東日本大震災の影響で、震災前の借入金の返済が困難となった個人に対し、一定の要件で、債務の免除をする措置。
注2 グループ補助金 東日本大震災・原発事故で被害を受けた中小企業グループに対し、国と県が設備などの復旧費を最大4分の3補助する事業。
注3 水産持区(水産業復興特区) 漁協に優先して与えられていた漁業権を民間会社に解放することを宮城県の村井知事が提唱。2013年4月に復興庁が特区を認定し、石巻市桃浦地区の養殖業者でつくる合同会社に適用。
(「しんぶん赤旗」2014年9月11日より転載)