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新「安全神話」押しつけ・・川内原発 福島事故の教訓どこへ

 原子力規制委員会が九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)について規制基準に「適合した」とする審査書を正式決定しました。安倍政権は「規制委の判断を尊重し、再稼働を進める」と表明しました。しかし、東京電力福島第1原発事故がいまだに収束せず、原因究明が尽くされていない段階で策定された規制基準は、事故の教訓を踏まえたものと成り得ず、新たな「安全神話」を国民に押し付けるものでしかありません。             

「原発」取材班

 

避難計画は審査外

 

避難所でスクリーニング検査を受ける防災訓練の参加者(中央)=2013年10月、鹿児島県姶良(あいら)市
避難所でスクリーニング検査を受ける防災訓練の参加者(中央)=2013年10月、鹿児島県姶良(あいら)市

 重大なのは、規制委が避難計画を審査の対象にしていないことです。このことを指摘した一般からの意見に対し、規制委は「原子力防災は(別の法律に基づいて)対応が講じられている」と耳を貸そうともしていません。

 鹿児島県では、原発事故を想定した対策を求められている、原発の半径30キロ圏の9市町に約21万5000人(約9600世帯)が暮らします。また244カ所の病院や福祉施設に、避難対象者が約1万4000人います。そのなかで入院患者や高齢者など災害弱者とされる「要援護者」の避難計画の策定は10キロ圏内の17カ所のみ。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は「要援護者の避難計画は10キロ(圏内)で十分。30キロは現実的ではなく不可能」(6月13日)と無責任な発言をしています。30キロ圏外への避難に必要な時間を最長29時間と予測した県の試算でも要援護者を除外して「机上の計算だ」と批判されました。弱者が置き去りです。

 米国では、1979年のスリーマイル島原発事故後、米国原子力規制委員会が緊急避難計画を規制の対象にしており、避難計画が実現不可能などの理由で営業運転に入れず廃炉になった原発もあります。

 事故が起きた時の避難計画の実効性を検証せずに住民の安全は守れません。規制委の姿勢は、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全」(設置法第3条、規制委の任務)に反するものです。住民の安全に責任を負えずに再稼働など論外です。

火山学者から異議

14-09-11zu 火山対策には火山学者から根本的な疑問が出されています。

 九電は半径160キロ圏内で、将来活動する可能性がある14火山について、巨大噴火の可能性は「十分に小さい」と評価。継続的なモニタリングによって、巨大噴火の兆候があれば、原発の停止、燃料の搬出などを実施する方針です。審査書はこれを「妥当」と認めています。

 しかし、審査書案の意見公募が終了した後に開かれた規制委の検討会で、火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東京大学名誉教授が、噴火の可能性を「十分に小さい」と判断したことに「いくつも疑義がある」と表明しました。原発停止後、使用済み核燃料を搬出するには、3〜5年敷地内で保管して冷やさなければいけません。中田節也東京大学教授から「燃料の搬出に間に合う、数年あるいは10年という単位で(巨大噴火の前兆)現象は見えるものではない」「巨大噴火の時期や規模を予測することは現在の火山学では極めて困難、無理」と指摘されるなど、審査書に記載された火山対策の根拠に異議が出ているのに、まともに検討されていません。

ずさん審査明らか

 新しい規制要求となった重大事故対策の審査のずさんさも明らかになっています。

 九電は米国製の計算ソフトを用いて、最も過酷なケースとして、事故発生から約19分で炉心溶融が始まり、1・5時間で原子炉圧力容器が損傷するものの、49分後に格納容器内に注水することで、格納容器が壊れることを防げると解析しています。これについて、審査書は「対策の評価項目をおおむね満足している」と判断しています。

 しかし、電力会社の解析結果の妥当性を判断するため、旧原子力安全・保安院などが従来行っていたクロスチェック(異なる角度からの点検)解析が厳正に実施されていません。九電の解析結果が違えば、対策の有効性に影響します。電力会社任せの手抜き審査といわざるを得ません。

 福島第1原発で収束の最大の障害になっている放射能汚染水対策も審査で議論すらされませんでした。

 規制委は、こうした問題だらけの川内原発の審査書を、今後の他の原発の「ひな型」にしようとしていますが、とんでもないことです。


 

再稼働ありきの審査書撤回を

日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会笠井亮責任者の談話

 日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者の笠井亮衆院議員が9月10日発表した「川内原発再稼働ありきの審査書は撤回せよ」の談話は、次の通りです。

 一、原子力規制委員会は、本日、九州電力・川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)について、「新規制基準」に適合しているという初の「審査書」を正式決定しました。これは、「巨大噴火を予知することは困難」など専門家や多くの公募の意見にも一顧だにせず、重大事故対策、地震や火山、住民の避難計画など、多くの課題について、まともな対応もないまま、出された「合格証明書」であり、断じて認められません。住民のいのちと安全より原発再稼働ありきの今回の決定は、ただちに撤回すべきです。

 一、そもそも原子力規制委員会が「適合」しているとした「新規制基準」自体、安倍政権が繰り返すような「世界最高水準」でもなく、これによって川内原発の「世界最高水準の安全性は担保された」(田中規制委員長)などという代物でもありません。この基準には、未解明の福島第1原発事故の教訓は反映されておらず、欧州連合(EU)で採用されている核燃料溶融時の対応設備や格納容器の二重化などすらありません。こんなお粗末な基準にもとづいて川内原発の再稼働を強行し、今後の″ひな型″とすることは、新たな「安全神話」をふりまくもので、決して許されません。

 一、この夏は、48年ぶりに「稼働原発ゼロ」の夏となり、原発なしでもやっていけることが証明されました。大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた5月の福井地裁に続いて、原発事故で避難中に命を絶った女性への損害賠償を命じた8月の福島地裁の判決は、ともに「原発と人類は共存できない」ことをはっきり示しました。地元の薩摩川内市内、官邸前、全国各地でも、「安倍政権は、原発再稼働をやめよ」の声が広がっており、国民世論の多数が再稼働反対です。日本共産党は、全国のみなさんとともに、川内原発をはじめ全国の原発の再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」を実現するため、全力を尽くします。

(「しんぶん赤旗」2014年5月11日より転載)

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