インド東部ジャル力ンド州、ウラン鉱山周辺の村々で報告が相次いでいる先天異常やがんの増加。医師団体や環境団体による複数の調査報告書が問題視しているのが、村人の生活圏内にある選鉱くずの貯蔵池です。
「好ましくない」
集落から300メートルほど離れたところに貯蔵池の堤防がそびえます。付近には鉱山を運営するインド・ウラン公社(UCIL)が立てた「貯蔵池を歩くことは健康上好ましくない」との看板があります。しかし扉などはなく、誰でも立ち寄ることができます。
堤防直下の池の前で男性住人は「何年か前まで、みんなこの池で水を浴びていた。子どもも走り回って遊んでいた」と話します。すぐそばで、家畜のヒツジが草を食べています。
貯蔵池は3期にわたって建設され、面積は計1平方キロ弱。ここに公社は、ウラン鉱石を破砕してできた岩くずなどを排水と混ぜ合わせ、投棄してきました。ここからあふれた水はいったん公社のプラント内に入った後、近くを流れるグッラ川に流れ込みます。住民はこの川で魚を釣り、野菜を洗います。環境団体は放射性物質が残留しているのではないかとみています。
一方、健康被害の原因が、放射能以外の水質汚染である可能性を示した報告もあります。
重金属の検出も
2008年に首都ニューデリーの調査機関「環境科学センター」が現地の井戸水など10のサンプルを分析。現地基準の14倍の鉛や、3倍の水銀、2倍のカドミウムなどの重金属が検出されました。
しかし公社は「安全」を強調。同社サイトは「廃液は石灰で中和し、放射性物質や重金属を除去する。粒子は貯蔵池で沈殿する。
水はプラント内で処理し、環境基準を満たしてから排出している」と説明します。
また、「周辺の村で見られる疾患は放射能などが原因ではなく、低栄養やマラリア、非衛生的な生活環境によるもの」とも述べています。
質問に回答なし
本紙は公社本社に面会取材を求めましたが、「公社の許可しない外国人には会えない」。広報責任者が「Eメールでの問い合わせには応じる」と答えたため質問を送りましたが、回答はありませんでした。
「公社が関与を否定する中、先天異常は発生し続けている」
90年代から住民の健康被害を訴える作品を撮ってきた映画作家シュリ・プラカシュ氏(48)は語気を強めます。撮影した子どもの多くがすでに亡くなったといいます。
「原因が放射能なのか重金属なのか不明だが、独立した第三者による科学的な調査を一刻も早く実施すべきだ」
(インド東部ジャル力ンド州ジャドゥゴラ=安川崇 写真も)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2014年8月28日より転載)