インド東部ジャル力ンド州。州内有数の工業都市ジャムシェドプルから約35キロ、東で1時間。ヤシやシュロの林の間に水田が散在する農村地帯に、インド・ウラン公社(UCIL)がウランを採掘する「ジャドゥゴラ鉱山」はあります。
同鉱山は1967年、国内初のウラン鉱山として操業を開始。以来40年以上、採掘と精製を続けてきました。従業員5千人。地下数百メートルから運ばれた鉱石を破砕し、ウラン濃度を高めた粗製物の状態で出荷。国内のプラントで核燃料などに加工されます。
インドは74年の核実験による国際社会の制裁で、海外から核物質や核技術の輸入ができない状態が続きました。しかし98年には独自で核実験を行い、核保有を宣言。この間の核開発を支えたのが、公社が生産するウランでした。
「公社が来たとき、住民はウランのことなど何も知らなかった。『鉱山が操業すれば雇用も生まれ、地域が発展する』といわれ、みんな歓迎した」。公社本社があるジャドゥゴラ村の男性住人はこう振り返ります。
先天異常やがん
住民団体「放射能に反対するジャルカンド人組織」(JOAR)のガナシャム・ビルリ議長(50)によると、80年代ごろまでに住民は、先天異常やがんが増えていることに気付き始めたといいます。
住民の訴えなどで90年代から、環境団体や反核団体などが数回にわたって現地調査を実施。放射能汚染などの可能性を指摘してきました。
そのうちの一つ、医師の全国団体「平和と開発のためのインド人医師」が2007年に実施した調査は、鉱山から半径2・5キロ以内の村に住む2118世帯のデータを、約30キロ離れた村の1904世帯と比較しました。
この調査で、鉱山周辺の村では▽四肢などの先天異常の発生率が1・8倍▽先天異常による子どもの死亡率が5・8倍▽不妊、がん発生率がそれぞれI・5倍・・との結果が出ました。
操業関わる被害
比較対象の村より収入レベルは高いにもかかわらず、州の平均寿命(62歳)以下で死亡した人は15%多かったといいます。
調査報告書はこれらの健康被害の原因を特定していません。しかし飛散した放射性物質による被ばくや、鉱物の化学的毒性が背景にある可能性を強く示唆。「ウラン鉱山の操業に関わる健康被害であると考えられる」と結論付けています。(インド東部ジャル力ンド州ジャドゥゴラ=安川崇 写真も)
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2014年8月26日より転載)