滋賀県の琵琶湖東岸に位置する湖東地域。彦根市と愛知(えち)、犬上両群4町で、「原発をなくす自治体宣言」をあげようと住民運動が進められています。元裁判長が街頭で高校生から署名を集め、前町長がマイクで訴える「前代未聞」の取り組みとなっています。
(滋賀県・浜田正則)
滋賀県湖東地域で会結成
滋賀県は14基(運転終了の「ふげん」を含めると15基)もの原発のある福井県に隣接し、福島原発事故と同じような過酷事故が起これば、住民の命が脅かされ、近畿1450万の命の水源である琵琶湖が汚染されます。住民らはいてもたってもいられない気持ちで、福島事故から3年がたった今年(2014年)3月15日、「彦根・愛知・犬上原発のない社会をつくる会」を立ち上げました。「会」には立場の違いを超え、「原発のない社会をつくる」という一点で住民285人(8月12日現在)が参加しています。
風ひとつで
11人の共同代表の一人、井戸謙一さんは元裁判官です。金沢地裁裁判長だった2006年、志賀原発2号機の運転差し止め訴訟で、初めて原発の差し止めを命じる判決を出しました。現在は弁護士として原発をめぐる多くの住民訴訟に携わっています。井戸さんは結成総会で訴えました。
「原発は必ずなくなります。問題は第2の福島が起こる前になくせるかどうかです。そのためには、いま以上に『原発なくせ』という声を大きくしていく必要があります」
「脱原発をめざす首長会議」に参加している前愛荘(あいしよう)町長の村西俊雄さんも共同代表に名前を連ねています。町長だった2011年4月、町民から寄せられた支援物資を東北の被災地に届け、「原発事故は余りにも悲惨すぎる」ということを思い知りました。全村民避難を余儀なくされた飯舘(いいたで)村と福島第1原発との距離は、愛荘町と福井原発との距離とそんなに変わりません。「風ひとつで、私どもの町も全町避難の運命になり得ることもあります。首長の使命は住民の命と安全を守ることです」と語っています。
各紙も報道
「会」は3月の結成以来、関西電力に原発の再稼働の申請を取り下げるよう求める署名と、彦根など1市4町の首長に大飯(おおい)・高浜原発の再稼働反対を意見表明するよう求める署名を、集めています。5回の街頭署名、農協や漁協、医師会への呼びかけ、福井地裁判決の緊急報告集会など、さまざまな活動に取り組んできました。新聞各紙も報道し、「会」の存在が住民にも知られるようになってきました。
安倍政権が原発の両稼働に突き進むなか、7月27日に開いた住民討論集会では、原子力規制委員会に提出する川内(せん
だい)原発再稼働反対のパブリックコメント(市民の意見)を採択しました。来年3月の総会までに会員を1000人にすることも確認しました。
杉原秀典事務局長は「8割を超える国民が『原発のない社会』を望んでいます。住民の過半数をつなげる運動を多様に展開し、1市4町で『原発をなくす自治体宣言』をあげたい」と意気込みます。
(「しんぶん赤旗」2014年8月17日より転載)