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“再稼働やめ生活再建”・・福島・原発立地4町長に聞く

14-04-11mati 東日本大震災・東京電力福島第1原発事故から3年1カ月。いまだに福島県民の約13万4千人が故郷に戻れず、震災関連死は1691人(4月8日時点)と深刻です。福島第1原発が立地する双葉、大熊両町、同第2原発が立地する富岡、楢葉(ならは)両町4人の町長に、抱える問題点や復旧・復興策、原発事故への思いなどを聞きました。
(聞き手・写真)福島県・野崎勇雄

事故の検証、反省こそ・・双葉町・伊澤史朗 町長

3年たったのに双葉町民は今も全国39都道府県、386市町村に避難していて、生活再建できていません。

町民の96%が帰還困難区域、4%が避難指示解除準備区域の住民です。放射線量の違いによって今後の賠償や生活支援に差があってはなりません。生活を改善し、賠償もそれぞれに寄り添ったものにする必要があります。

ふるさと双葉町への帰還時期をまず明らかにするのが、復興の一番の原則だと思っています。国の指示で今も避難していますから、国に帰還の見通しを明らかにするよう要望していますが、時期は依然として不明です。

帰還のためには除染とインフラ復旧で環境整備を進める必要がありますが、私たちのレベルでは判断できません。だからといって町が手をこまねいているわけにはいきません。昨年(2013年)6月に「復興まちづくり計画(第1次)」、今年3月には「事業計画」を策定し、戻る努力をしています。

国直轄の除染は、帰還困難区域の3カ所のモデル地区と町内の墓地で実施しました。本格的に除染を進めるにあたっては、国に数値目標を設定するよう求めています。また、避難指示解除準備区域の除染計画はまだ示されていません。

不思議なのは、国は双葉郡全体の復旧復興の方針を示していないことです。国がグランドデザインを考え、復旧復興すべきです。

放射能汚染土などを保管する中間貯蔵施設問題ですが、国は受け入れ要請する前に生活再建策や地域振興策を提案しませんでした。施設用地を国有化でなく借地にしてほしいという要求にも回答していません。国が誠意ある対応をしないため判断が遅れています。

住民の健康、安全安心を考えた場合、福島第1原発事故の収束について不安材料が多過きます。収束に向けた作業が順調だとは決して思いません。

町が原発と共生してきたのはまぎれもない事実ですが、「原発は安全だ」と頭に擦り込まれたからです。危険性が指摘されていたことを含め、原発事故は間違いなく人災です。

原発の再稼働よりも福島第1原発の事故を反省し、検証することから始めるべきです。

国は住民の声を聞いて・・大熊町・渡辺利網 町長

私たちは、2012年暮れに「5年間は帰らない」という宣言をしました。17年度までに戻れる環境を整備しようと努めています。昨年(2013年)度からは帰還困難区域以外の本格除染を始めました。

町内では空間放射線量が低い方の大川原地区的39ヘクタールの除染を完了しました。復興拠点にし、町再建の第一歩とする位置づけです。インフラを整備しながら、除染・廃炉に関する支援施設や研究機関をつくる計画で、原発労働者のための給食センターが来春オープン予定です。

復興公営住宅は、今年度中の入居が137戸、さらに16年度までに約5000戸つくる計画です。民間借り上げ住宅も保障しながら、仮設住宅にいる人たちの生活を早く落ち着かせたいと思っています。

大熊町は、事故を起こした東京電力福島第1原発の四つの原子炉があり、線量が高いところです。帰還するには、安全に廃炉を進めることが必要です。復興のシンボルになるよう支援施設をつくれと国に求めています。

町の産業を原発頼みから転換して新たな雇用の場をつくり、戻って生活できるよう生業(なりわい)、教育、医療・福祉を整備していくことが求められます。高校まで大熊町に住んでいたという人が、「私にとって故郷は大熊町です」と伝えてきました。今いる人だけでなく、そういう人たちのためにも復興させる責任があります。

放射能汚染土などの中間貯蔵施設の必要性や重要性は認識していますが、町民にはいろいろな思いがあります。地域の振興策とか、施設から道1本隔てた住民への支援策とか、墓や神社、文化財の扱いなど、問題は少なくありません。

国からは建設の要請はあっても、住民の声を真剣に受け止める具体的な回答がありません。町民への説明会を開き、議会と相談しながら、スピード感を持って対応したいと思います。

3年たっても復興の歩みは遅く、福島県民がこれだけ苦しんでいるのに原発の再稼働はありえません。日本全体としても、将来的には減原発、脱原発の方向だと思います。

被災者支援の法整備を・・富岡町・宮本皓一 町長

東京電力福島第1原発事故から3年がすぎ、国はスピード感をもって除染に取り組んでほしいが、なかなか進んでいません。今年月から本格的除染に入り、4月から住宅除染が始まります。

当初の計画通り今年の3月までに除染が終わっていれば戻れるでしょうが、これからだから2~3年はかかります。住宅が終わったら農地をやるといいますが、ぜひきちんとやってほしいです。

町民アンケートなどによると、帰還する人が12%、帰らない人が47%、あとは迷っている状況です。帰還する12%は、住宅が雨漏りや小動物による被害を受けていない人たちです。住民が切実に願っている荒廃家屋の解体を2年間求め続け、今回やっと認められました。

避難者は、応急仮設住宅に約2300人、それ以外は借り上げ住宅住まいです。事故から3年たち、移住する人も多くなりました。

国は、全員帰還させるという方針を転換し、帰るか帰らないかの二者択一という政策を打ち出しましたが、私はどうかと思います。今帰れない状況にあっても、長期避難・将来帰還という第三の選択があっていいはずです。

長期避難のための住宅借り換えも含め、災害救助法を原子力災害に特記した法律をぜひつくってほしいです。

双葉、大熊両町の放射能汚染土などを保管する中間貯蔵施設問題がありますが、富岡町には1キログラムあたり10万ベクレル以下の放射性廃棄物最終処分場の要請がきています。国は町議会、住民に対し、ていねいに説明すべきです。私は受け入れ前提ではなく、町民の判断を大事にしていくつもりです。

福島第1原発事故は人災です。多数の住民の避難生活を考えただけでも、福島第2原発の再稼働はありえません。

各地で再稼働の動きがありますが、福島原発事故の検証が行われていないし、災害関連死が大問題になっているのに、原発政策を進めてきた人たちの誰も罪に問われず、責任を取っていません。こうしたことが再稼働より先です。

事故は収束していない・・楢葉町 松本幸英 町長

東京電力福島第1原発事故により全町避難してから3年たちましたが、私たちは町民が町に戻る(帰町)日をいつにするか決断すべきときにきています。

「第2次楢葉町復興計画」では今年の春に帰町判断するとしていて、今さまざまな角度から検討しているところです。ポイントは、インフラ整備状況、国直轄の除染の効果、大事故を起こした福島第1原発の状況という三つです。

第1原発は、汚染水、4号機の燃料棒取り出し、廃炉作業と心配な状況がいろいろあります。

汚染水は「重大事態」という状況が収まっていません。4号機の燃料棒は全部取り出すまであと1年はかかるでしょう。その間、帰町するのは厳しいと受け止めています。

原発事故は収束していません。1~3号機のメルトダウンした核燃料デブリ(堆積物)の取り出しには相当の期間がかかるのではないか。私たちはずっと注視していくし、国や東電は事故収束、廃炉作業について情報公開をきちんとしてほしい。

アンケート結果を見ても、町に戻ることへの町民の期待は依然大きい。しかし、避難期間が長くなるほど戻りづらくなるし、失うものも大きくなります。かといって早く帰るという話ではありません。

町民は除染状況への不安が強いですから、スムーズにいくかどうかは分かりません。

国や県に求めたい最大の要望は、戻りたい人も、戻ることができない人も、しっかり生活再建できるように支援してほしいということです。

国策で原発を推進し、これだけの大事故を起こして住民を苦しめたのだから、国が新たな地域振興策を含め大きな計画を示してほしい。もちろん私たちも考えますが。

私は昨年(2013年)9月、福島県原発所在町協議会の会長として、県内二つの原発の全原子炉(10基)廃炉要求確認のとりまとめにあたりました。原発事故によって悲惨な状況が続いています。そこから考えると県内原発10基廃炉は自然な流れと考えています。

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