環境省と福島市など福島県内4市は8月1日、東京電力福島第1原発事故の除染方法に関する中間報告を発表しました。報告では、空間線量に基づき除染を進める従来の方針を転換し、住民個人の被ばく線量を重視して対応していくことが重要だとする考えを打ち出しました。同時に、空間線量が毎時0・3〜0・6マイクロシーベルト程度であれば、政府が長期目標として掲げる個人の追加被ばく線量年1ミリシーベルト以下をおおむね達成できるとの調査結果も示しました。
福島市で記者会見した環境省の井上信治副大臣は、調査結果については「(市町村の)除染の参考にしてもらいたい」と述べました。
政府はこれまで、個人の追加被ばく線量年1ミリシーベルトを空間線量に換算すると、毎時0・23マイクロシーベルトに相当すると試算し、示してきました。
中間報告では、毎時0・23マイクロシーベルトについて「除染の目標ではない」と明記しました。
解説・・除染目安示さず市町村に丸投げ
環境省が当初、住民に配っていたPRパンフ『除染のお話し』には、「長期的な目標とする年間追加被ばく線量は1ミリシーベルト以下です」「具体的な空間線量率の目標は0・23マイクロシーベルト毎時になります」と明記してあります。
井上信治環境副大臣は8月1日、記者団に「0・23マイクロシーベルトは除染の目標ではない」と明言しました。
今回の方針転換は、住民の被ばくについて、空間放射線量に基づく推計よりも、線量計などで計る住民一人ひとりの被ばく線量となる個人線量を重視するという考え方に基づくものです。しかし、この考え方が除染とどう結びつくのか。除染は放射能に汚染された土などをはいだりして、空間放射線量をその前後に計り効果を確認する作業です。除染の目安がなくなった形になり、除染があいまいになる恐れがあります。
そこで、政府が示したのが、福島、郡山、相馬、伊達の4市の除染データから、「空間線量が毎時0・3〜0・6マイクロシーベルトであれば、住民の平均的追加被ばく線量は長期目標の年間1ミリシーベルト程度になる」という調査結果です。これについては立谷秀清相馬市長も「われわれのデータだけで議論するのは非常に危険」と述べています。
空間線量からの推計より、個人線量重視といいながら、別の、今までより高い空間線量を持ち出す。実際の除染は市町村に丸投げする。本来除染に責任を負うべき政府の無責任さがあらわです。
(柴田善太)
(「しんぶん赤旗」2014年8月4日より転載)