原子力規制委員会が審査書案をまとめた九州電力川内原発(鹿児島県)が立地する南九州には、過去に巨大噴火を起こした火山が複数あります。規制委や九電は噴火の兆候を監視すれば対応できるとの立場ですが、火山学者からは「予知は困難」と疑問の声が上がっています。
噴火によって火砕流が原発に到達すれば、設備の損壊や作業員の死傷につながりかねません。降灰でも機器が故障したり、交通網がまひしたりする恐れがあります。
原発の規制基準は半径160キロ圏内の火山を検討対象としています。川内原発では巨大噴火があったことを示すカルデラ(大きなくぼ地)が主なものだけで五つあります。九曜はうち三つについて、火砕流が川内原発がある場所に達した可能性を認めています。
規制委はカルデラでマグマの量が増えれば地表付近に変化があるとの前提に立ち、九電に観測場所を増やすよう求めました。
だが、日本大の高橋正樹教授は「噴火の時期や規模の予測は不可能」と苦言を呈します。
日本では、巨大噴火は1万年に1回程度の割合で発生しています。高橋教授は、前回の巨大噴火は約7300年前で、近
い将来再び噴火する可能性も否定できないと話します。
また、東京大地震研究所の中田節也教授は「地震対策で活断層を13万年前までさかのぼって調べるなら、1万年に1回という頻度の巨大噴火対策はより厳しくないといけない」と指摘します。
規制委の審査では、火山の専門家が九電の対策に直接意見を述べる機会がありませんでした。首都大学東京の町田洋名誉教授は巨大噴火の発生頻度が低いことを認めつつ、「自然は人の思うようには動かない」と強調。鹿児島大の井村隆介准教授も「近くのカルデラで、既にマグマが多量にたまっている可能性も否定できない」と懸念しています。
(「しんぶん赤旗」2014年7月18日より転載)