東京電力福島第1原発事故のため全町避難が続いている福島県富岡町からこの間、救出された貴重な考古資料類の展示会が、福島県立博物館(会津若松市)で開かれています。
会津若松市
会津若松市・鶴ケ城公園の一角にある同博物館の玄関を入って受付を過きると、「ふるさとの考古資料5 【富岡町】遺跡探訪」の看板が掲げられたコーナーがあります.
縄文から室町
縄文時代から室町時代までの資料を時計回りに陳列。同町最古の遺跡は後期旧石器時代ですが、定住していた痕跡は見つかっていません。集落形成が認められるのは、約6000年前(縄文時代早期末〜同前期)の「上本町(かみもとまち)G遺跡」が最初です。約4000年前(縄文中期)の「前山遺跡」は環状集落へと拡大し、複式炉になっているのが特徴です。
同博物館主任学芸員の荒木隆さんは、「複式炉は東北地方の縄文中期文化の代表的なものとして有名です。東北から関東にかけて分布し、福島県でとくに多く見られます。県内で使われていた土器も、東北と関東の両方の文様が見られ、現在の福島県の地域が南北文化のかけはしになっていたのではないか」と語ります。
飛鳥時代の「小浜(こばま)古墳群」から出土した土師器杯(はじきつき)、奈良時代の軒丸瓦(のきまるがわら)、「後作(うしろさく)B遺跡」の製鉄炉跡など貴重な資料があります。展示資料は約250点です。
東日本大震災・原発事故の翌年2012年から13年にかけて、富岡町歴史民俗資料館をはじめ町内施設などに保管されていた出土品などのレスキュー事業が始まりました。県文化財課が呼びかけ、同博物館なども参加。除染、梱包(こんぽう)、運搬と専門的な作業が多く、県内自治体の資料室関係者や全国各地の博物館の学芸員などがボランティア作業に参加しました。
県文化財センター白河館(まほろん)に運び込まれた資料を再整理し、きちんと並べて収蔵庫に収納。そのなかから選択して、今回のテーマ展開設に至りました。
文化財レスキュー事業に加わり、昨年(2013年)から県立博物館に異動している荒木さんは、こう語ります。
大先輩の足跡
「その地域の歴史はそこにしかなく、それをほうってはおけません。救い出したら、早く自由に見ることができるようにしたい。歴史の大先輩たちが生活向上のためにがんばってきた足跡が残っています。そこに光を当てることによって、現代の私たちもがんばろうと気持ちを新たにする契機になればいいですね」
同展は来年5月10日まで開かれます。毎週月曜日休館。問い合わせ先は福島県立博物館 電話0242(28)6000
(「しんぶん赤旗」2014年6月24日より転載)