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新規制基準 審査通過しても問題解消せず・・大飯原発福井地裁判決が示すもの

福島第1原発で建屋が崩壊した4号機の使用済み核燃料プールに注水車(右)から放水する様子=2011年3月22日、東京電力提供
福島第1原発で建屋が崩壊した4号機の使用済み核燃料プールに注水車(右)から放水する様子=2011年3月22日、東京電力提供

 関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決(5月21日)は、原発の機能や構造の欠陥に関連して、原子力規制委員会で行われている、新規制基準の適合性審査の問題点もあぶり出すものとなりました。

(三木利博)

「脆弱性は継続」

 判決文は次のように指摘しています。

 「問題点が解消されることがないまま、新規制基準の審査を通過し(大飯)原発が稼働に至る可能性がある。こうした場合、原発の安全技術および設備の脆弱(ぜいじゃく)性は継続する」

 新規制基準は、基準地震動(想定される地震の最大の揺れ)に耐えるまで外部電源(外部からの送電)と主給水ポンプ(原子炉に水を送る主なポンプ)の強度を上げることや、使用済み核燃料を強固な施設で囲い込むなどの措置を盛り込んでいないからです。

使用済み核燃料の危険指摘

 判決は、このうち使用済み核燃料問題で、「原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に、外部からの不測の事態に対して堅固な施設によって防御を固められてこそ初めて万全の措置をとられているということができる」と指摘します。

 使用済み核燃料は原子炉から取り出された後の核燃料。崩壊熱を出し続けるので水と電気で冷却し続ける必要があり、建屋内の使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に置かれています。

 東京電力福島第1原発では、4号機建屋上部にあったプール(未使用の核燃料も含め1535本)で、原子炉停止から間もない核燃料が入っていたため、崩壊熱による発熱が大きく、冷却不能による燃料溶融が心配されました。この時、水素爆発で建屋上部が崩壊したことで、海水注入が容易にできました。

放射能被害想定

 使用済み核燃料の危険性は、福島原発事故直後の2011年3月25日に、首相の要請で原子力委員会委員長が提出した「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」での被害想定に示されています。

 被害想定は、原子炉だけでなく各号機の使用済み核燃料プールからの放射能汚染によって、強制移転を求めるべき地域が170キロメートル以遠に及ぶ可能性や、移転を希望すれば認めるべき地域が、東京都のほぼ全域、横浜市の一部を含む250キロメートル以遠にも発生する可能性があるとしていました。

 大飯原発も水槽内に1000本を超える使用済み核燃料があります。関電は、使用済み核燃料は40度以下の水によって冠水状態で貯蔵されているという理由で、堅固な施設で囲い込む必要はないと主張しています。

 これに対し、判決は福島第1原発事故で4号機のプールが破滅的事態を免れ、「不測事態シナリオの素描」にある避難計画が現実のものとならなかったのは、あくまで運がよかっただけと指摘。関電の主張を「失当である」と退けています。

 また、関電の「福島原発事故を踏まえて、さまざまな施策をとり、訓練も重ねた」との主張にも反論。深刻な事故の進展は予想がほとんどできないだけでなく、福島原発事故の全容が解明されていないとして、「『福島原発事故を踏まえて』という言葉を安易に使うべきではない」と痛烈に批判しています。

 現在、再稼働の前提となっている新規制基準の審査には、判決で指摘されたような議論が欠如しています。

(「しんぶん赤旗」2014年5月26日より転載)

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