東京電力福島第1原発で、放射能汚染水の増加を抑制するため、国と東電か計画している凍土方式の遮氷壁(凍土壁)の安全性に関して、原子力規制委員会の検討会が5月26日開かれ、東電などから凍土壁によって地盤沈下が生じないかなどについて説明がありました。専門家からは、地盤沈下に関しては大きな異論はなく、当初の予定通り6月着工される見通しになりました。
東電と工事を請け負う鹿島建設は、凍土壁による地盤沈下は、仮に地盤が傾斜してもわずかで建屋の安定上問題はないと説明。更田豊志委員は「最も懸念していた地盤沈下に関しては、程度についておおむね確認ができた。(6月からの)着手を妨げるものではない」と述べました。
一方、凍土壁計画全体に関しては、建屋地下にたまっている汚染水の水位管理や非常時の対策などの論点が残っており、計画そのものの認可にはこれらの議論が必要です。
この日の検討会では、出席した専門家から凍土壁について「反対だ」として、従来の地盤改良方法などと組み合わせて、「凍結ができたあとでも半永久的に汚染物を外に出さない」対策を求める意見が出ました。また、東電に対する規制委の態度について「アルプス(多核種除去設備)は次々と故障を起こして止まっている。凍土壁に関しても設計レベルまで踏み込んだチェックをしないと実際に役に立つ、住民が安心するような議論にはつながらない」などの意見が出されました。
凍土壁は、1〜4号機を囲む形で地中約30メートルの深さまで凍結管を打ち込み、周囲の土壌を凍らせるもの。東電は、凍土壁に加えて、敷地をアスファルトなどで舗装して雨が地下水になるのを抑制する対策をした場合、建屋に1日平均400トン流入していた地下水を同160トンまで減らせると予測しています。
地下水の放出・・27日に2回目
東京電力は5月26日、福島第1原発の地下水バイパス計画で、2回目の海への地下水放出を27日に行うと発表しました。放水量は約640トン。計画は、原子炉建屋などへの地下水流入による高濃度の放射能汚染水の増加を抑制するために、建屋の山側で地下水をくみ上げて海に流すもの。初回の放水は21日に実施。
一方、海水の分析では、港湾内の1、2号機取水口間の下層海水(25日採取)から過去最高値となる1リットル当たり1100ベクレルの全ベータ(ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質)を検出。これまでの最高値だった同840ベクレル(15日採取)の1・3倍となります。
護岸地下水も2カ所で過去最高値を更新。1号機海側の地下水(25日採取)からはセシウム134、137がこれまでの最高値(4日採取)の約1・3倍に当たる同29ベクレル、同78ベクレルに。2、3号機ウエルポイントくみ上げ水から同5900ベクレルのトリチウム(3重水素)を検出しました。
今年2月に高濃度の放射能汚染水100トンが流出したタンク群の下流側の地下水(24日採取)から同2600ベクレルのトリチウムを検出。これまでの過去最高値(22日採取)を同200ベクレル上回り、更新しました。
(「しんぶん赤旗」2014年5月27日より転載)