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大飯再稼働差し止め 原発は人格権侵害・・福井地裁 福島事故後初 & 原発の本質的危険認める

 福井県内外の住民189人が関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働差し止めを求めた訴訟で、福井地裁(樋口英明裁判長)は5月21日、2基について「運転してはならない」と言い渡しました。2011年の東京電力福島第1原発事故後、原発の運転差し止めを命じた判決は初めて。


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 樋口裁判長は、人の生命を基礎とする人格権をもっとも重視し、「これを超える価値を他に見いだすことはできない」と強調。そのうえで、住民らの人格権と電力の安定供給やコストの問題をてんびんにかけた関電側の議論を厳しく退け、「国富の喪失」とは運転停止による貿易赤字ではなく、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していること」を失うことだと強調しました。

 また、原子力発電技術がもたらす危険性と被害の大きさは福島事故で自明とし、同事故を受け、同様の事故の具体的危険性が万が一にもあるかの判断を避けることは、「裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい」としました。

 判決では、地下深くで起こる地震現象について、「仮説や推測に依拠せざるを得ない」「正確な(地震の)記録は近時のものに限られる」などと指摘。この10年足らずにも原発が想定を超える地震動に襲われた事例が5ケースある事実を重視し、「自然の前における人間の能力の限界を示すもの」として、大飯原発の想定も不十分としました。また、冷却機能喪失の危険性、使用済み核燃料プールの脆弱(ぜいじゃく)性などを指摘。大飯原発から250キロ圏内の住民は、運転によって人格権が侵害される具体的な危険があると述べています。

 原発の運転差し止め訴訟で住民側が勝訴したのは、金沢地裁が06年、運転中だった北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の差し止めを命じて以来。

全原発の再稼働断念を・・
党原発・エネルギー対策委責任者 笠井氏が談話

 日本共産党の笠井亮・原発・エネルギー問題対策委員会責任者(衆院議員)は、福井地裁判決について、次の談話を発表しました。

 本日の福井地裁判決は、東京電力・福島第1原発事故後はじめて、原発の運転再開を認めない判断を下した画期的なものです。

 判決は、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす」という認識にたって、「国民の生存を基礎とする人格権」の立場から原発の本質的な危険性を指摘し、関西電力の主張を論破して、大飯原発の運転差し止めを求めています。これは、福島事故と3年後の深刻な現実を踏まえ、地元・福井県をはじめ全国各地での粘り強い世論と運動の広がりを反映したものにほかなりません。

 安倍政権は、今回の判決を真摯(しんし)かつ重く受け止め、大飯原発はもとより、全国の原発の再稼働を即刻断念すべきです。日本共産党は、一点での共同を広げに広げて原発再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」を実現するため、いっそう力を尽くすものです。

大飯再稼動差し止め・・原発の本質的危険認める

 大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁の判決は、原発が抱える本質的な危険を認めた画期的なものです。

 判決文は冒頭、「ひとたび深刻な事故が起これば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度の信頼性が求められて然(しか)るべきである」と指摘しています。

 その上で、大きな自然災害や戦争以外で、憲法上の権利である生存を基礎とする人格権が極めて広範に奪われる可能性は「原発事故のほかは想定し難い」と述べ、そうした事態を招く具体的な危険性が万が一でもあれば、「差し止めが認められるのは当然」と断じています。

 さらに「いったん発生した事故は時の経過に従って拡大していく」など、他の技術とは全く異なる「原発に内在する本質的な危険」を指摘。大飯原発には、地震の際に核燃料を冷やす機能、放射性物質を敷地内に閉じ込める構造に欠陥があるとして、関電が設定した、想定される最大の地震の揺れ(基準地震動)が「信頼に値する根拠は見いだせない」などと関電側の主張をことごとく退けています。

 判決文は、地震大国日本で、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは「根拠のない楽観的見通しにしかすぎない」し、「基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得る」なら、その危険は「現実的で切迫した危険と評価できる」としています。

 また、「電力供給の安定性、コストの低減につながる」など関電側が挙げる運転再開の理由づけについても指摘。「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題等とを並べて論じる」ことは「法的には許されない」と厳しく批判しています。

 判決文で述べているように、3年2カ月たった今も14万人もの人々が避難生活を余儀なくされ、先の見えない生活と、命と健康が脅かされている東京電力福島第1原発事故について、「原発の危険性の本質およびそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになった」と述べています。判決は、こうした具体的な危険性が万が一でもあるかどうかの判断を避けることは、「裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいもの」であると言い切っています。

 指摘されたことは大飯原発に限らず、全国の原発に当てはまることです。電力会社も国も判決を受けとめ、原発の再稼働を断念すべきです。 (三木利博)

(「しんぶん赤旗」2014年5月22日より転載)

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