福島第1原発周辺で放射性物質に汚染された植物を採取し、チョウの幼虫に与えたところ、早期死亡や異常の発生率が増えた・・。チョウの食べ物による被ばくの影響についての実験結果を、琉球大学の大瀧丈二准教授らの研究チームが、5月15日発行の科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に発表しました。
実験に使ったヤマトシジミは、日本では本州以南に生息する小型のチョウ。今回、沖縄に生息するヤマトシジミの幼虫に、福島県の広野町、福島市、飯舘村(平地)、飯舘村(山地)の4ヵ所と、比較のために原発から遠く離れた山口県宇部市で採取した植物の葉を食べさせて、放射性セシウムの摂取量と早期死亡や異常の発生率の関係を調べました。
その結果、宇部の植物を与えた幼虫は死亡率が4・8%、異常の発生率が6・2%だったのにたいし、福島県の4ヵ所で採取した植物を与えた幼虫は死亡率が約32〜63%、異常の発生率が約46〜75%でした。詳しい分析から研究チームは、半数が死に至る放射性セシウムの摂取量は1個体当たり1・9ベクレル、半数に異常が出る摂取量は同0・76ベクレルと結論づけました。この摂取量を体重1キロ当たりに換算すると、それぞれ5万4000ベクレル、2万2000ベクレルに相当します。
また、早期死亡や異常発生は、放射性セシウムの摂取量に比例して直線的に増加するのではなく、低い摂取量で急激に増加することがわかりました。同様の実験ができないためヒトとの関連性は未解明ですが、研究チームは「汚染地域にすむほかの生物についても、放射性セシウムの摂取による被ばくのリスクを認識することは重要だ」としています。
(「しんぶん赤旗」2014年5月17日より転載。写真と文=wikipedia=山本雅彦)