東京電力福島第1原発により拡散された放射性物質を取り除く除染のガイドライン(指針)について、環境省が初の改訂案を発表しました。「改訂の考え方」の一つが洗浄水の「放流・回収・処理方法を示す」という点です。今まで高圧洗浄機による作業で洗浄水がそのまま側溝に流されたりしたことに対する批判を受けたものです。
福島市の下水を処理するK処理場とF処理場。K処理場の下水汚泥に含まれる放射性物質の濃度は、1キログラムあたり100ベクレル台で推移していますが、F処理場は同3000ベクレル後半で推移しています。
なぜ、けた違いの数字になるのか。
下水道にはトイレ、台所などの汚水だけを処理して雨水はそのまま川や海に流す分流式と、汚水と雨水が混ざったものを処理する合流式があります。現在の下水道は分流式が主流です。
K処理場は分流式下水道、F処理場は合流式です。合流式の場合は下水の汚泥に雨に伴う放射性物質が付着し、分流式の場合は雨に伴う放射性物質は川か海にそのまま流れます。
雨が地表の放射性物質を運ぶように、除染で使った洗浄水も放射性物質を含みます。当然その処理を考える必要があります。
現行のガイドラインには「できる限り排水の回収を行う」とはありますが、その方法について言及はありません。改訂案では新しく「排水の処理」の項を加えています。
その内容は、▽セシウムは水にはほとんど溶出しない▽排水の濁りが多い場合や回収型の高圧洗浄の排水は処理する▽処理方法は土壌によるろ過、水槽を活用したもの、側溝を活用したものの3種類−というものです。
放射性物質を拡散させた原発事故発生に責任を持つ東京電力と政府は、放射能汚染を食い止めるため真剣な対応をすべきです。
(柴田善太)
陸上での取り組み強化を・・日本大学准教授・野口邦和さんに聞く
福島県本宮市、二本松市の除染アドバイザーを務める野口邦和日本大学准教授に、聞きました。
いま降ってくる雨水そのものにセシウムは含まれていません。地表にばらまかれたセシウムを雨水が運ぶのです。セシウムは粘土質成分に吸着する性質があり、そう簡単には水の方にいきません。しかし、細かい粘土質成分に吸着したものは粘土質成分ごと雨で流れるし、葉っぱについたものは水に溶けやすくなります。
昨年(2012年)6月、福島の中通りの阿武隈川沿いで放眠性物質の濃度を測定しました。川に雨水などが流れ込むある地点の側溝の土壌は1キログラムあたり43万ベクレルありました。川に流れ込んだセシウムは底の土に吸着し、徐々に海に流れていきます。
雨水が川や海に流れ込むことを止めるわけにはいかないのですから、川と海の汚染を減らすために、陸上の除染を強化するしかありません。
しかし政府の除染にかんする考え方は、「2年間で半減期による放射能の減衰で40%減少、除染で10%減少。計50%減少させる」と、自然頼みの姿勢が強い。もっと熱心に除染に取り組むべきです。
まず、いま住民が住んでいる地域の除染に力をいれるべきです。ところが政府は自治体任せにしています。
効果的方法を取り入れることも必要です。農業用水のもみ殼除染や、比較的簡易な汚染土壌の減容化技術も開発されているので普及すべきです。
手抜き除染にさせないためにも地元業者を中心にすること、作業員の教育・訓練を行うこと。そして国が責任を持って中間貯蔵、最終処分のめどをたてて、除染のスピードアップが行えるようにすることが大切です。