福島市で5月2日に聞かれた「ふくしま復興支援フォーラム」の集会で、東京電力福島第1原発の事故のために愛媛県に避難している農業、渡部寛志さん(35)が、「避難者から福島復興を考える」とのテーマで報告しました。同フォーラムは今野順夫福島大学名誉教授ら7氏がよびかけ、集会は今回で64回目です。
「命以外のほとんどすべてを失い、壊された心の復興ははたされないままに人生を終える人が続いていいのだろうか」
南相馬市小高区(避難指示解除準備区域)で農業を営んでいた渡部さん。事故直後に小学校入学を控えていた長女に、安全で落ち着いた入学を迎えさせたいと、大学時代を過ごした松山市に避難しました。
「代々続いた農家を自分の代で途絶えさせるなんて、納得がいかない」。農地を借りて農業を継続するとともに、毎月、ミカンを車に積み福島県まで20時間以上かけて自身で運び販売しています。託されて福島支援の品も届けます。
愛媛県に移り住んだ直後、同じ避難者が入居しているとされる県営住宅の駐車場で、「福島」「いわき」ナンバーの車を探し、持ち主が現れるのを待ちました。「この困難を乗り越えるために避難者が助け合わないと」
27人が参加する「東日本大震災愛媛県内被災者連絡会」を2011年5月に立ち上げました。同年11月には「自主避難の会」(70人)も結成、毎月交流会を開いてきました。愛媛県、福島県に避難者支援策の拡大を求めました。
12年9月にはNPO法人「えひめ311」を発足させ、代表理事として避難者相談、帰省援助、被災地との交流、四国の避難者の交流などを広げてきました。
この3月、6世帯(5世帯が避難指示区域の外からの自主避難者)で東電と国に賠償責任の明確化、完全賠償などを求め、四国初の提訴をしました。
「命以外のほとんどすべてを失い、壊された心の復興ははたされないままに人生を終える人が続いていいのだろうか」と訴えます。
「原因となった原発を完全に取り除くエネルギー政策の転換と、完全な除染を完結させ、コミュニティーを取り戻したい。原発が存在しない新たな社会をつくることが福島県民を根本的に救うと確信します」とのべました。
(文=「しんぶん赤旗」2014年5月4日付けより転載。写真=ふくしま復興支援フォーラムのFacebookより)