東京電力は6月29日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)敷地内の海に近い場所の地下水から高濃度の放射性物質が検出され、海へ漏れている疑いがもたれている問題で、新たに追加した観測孔(観測用井戸)の地下水から、放射性ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質(全ベータ)が1リットル当たり3000ベクレル検出されたと発表しました。最初に高濃度の放射性物質が検出された井戸の地下水の2倍以上の値です。
東電は19日、1~4号機ターゼン建屋の海側にある井戸の一つから5月24日に採取した地下水1リットルあたりストロンチウム90が1000ベクレル、トリチウム(3重水素)が50万ベクレルと、国の濃度限度のそれぞれ約30倍と約8倍に相当する高濃度で検出されたと発表しました。東電は、この井戸の周囲に4本の井戸を追加して掘削することにし、27日にそのうち1本目の掘削が完了したため、28日に地下水を採取して分析していました。
東電によると、最初に高濃度の放射性物質が検出された井戸で28日に採取した地下水の全ベータは同1400ベクレルだったのに対して、新しい井戸の地下水からは同3000ベクレルが検出されました。トリチウム濃度については分析中だとしています。
海に近い場所の地下水から高濃度のストロンチウム90やトリチウムが検出されていることに対して、東電は井戸が一昨年(2011年)4月に高濃度放射能汚染水が海へ流出したところに近いことから、そのときの残りではないかと推測しています。しかし、原子力規制委員会の委員からは、高濃度放射能汚染水が今も漏れ続けている可能性もあるとして予断を持たず対応するよう求める意見が出ています。
トリチウムとストロンチウム90 トリチウム(3重水素)は水素の放射性同位体で半減期は約12年。水分子に含まれて存在するので水から分離することが難しい特徴があります。ストロンチウム90はカルシウムに似た性質を持つ放射性物質で、半減期は約29年。摂取すると骨などに蓄積します。
福島第1 汚染の生コン車が除染せずに構外へ
東京電力は6月29日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の構内で作業をした際に放射能で汚染された生コンクリート車が、除染しないまま構外へ出たと発表しました。
その車両はいったん構内の作業を終えて外へ出るときに、汚染がないか検査をしたところ、後部バンパーに汚染が見つかり、除染の指示を受けました。しかし、除染をしないまま午後1時26分ごろ外へ出たといいます。
その後、楢葉町でコンクリートを積んで構内へ戻って作業をしました。再度外へ出るときに検査したところ、汚染が確認されたため、除染をした後、外へ出たといいます。東電は汚染された生コンクリート車が走った道路への影響を調査するとしています。