原子炉建屋直下を走る破砕帯(断層)が活断層である可能性が指摘されている日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の現地調査を、原子力規制委員会の専門家チームが7月17日から始めました。18日まで2日間の予定。初日の調査を終えた規制委の島崎邦彦委員長代理は「破砕帯について新たな知見が得られた」としながら、追加の調査が必要としました。
規制委の活断層調査は、関西電力大飯原発(福井県おおい町)などに続いて4カ所目。活断層の可能性が否定できなければ、もんじゅは廃炉を迫られることになり、核燃料サイクル政策にも大きな影響を与えます。
もんじゅの原子炉建屋の直下には8本の破砕帯(断層)があり、敷地の西500メートルにある長さ約15キロメートルの活断層「白(しら)木(き)―丹生(にゅう)断層」と連動して動くかどうかが問題になっています。また、敷地の南東方向にある線状地形(L―2リニアメント)が、もんじゅの敷地に延びている可能性も指摘されています。
原子力機構は4月、破砕帯のなかで最長の70メートルのa破砕帯の延長方向で確認された破砕帯の性状などから、白木―丹生断層に伴って動くことはないとする報告書を規制委に提出しています。
もんじゅ 研究用の高速増殖炉で出力は28万キロワット。通常の原発は核燃料を水で冷やしますが、高速増殖炉は金属ナトリウムで冷却します。水と違って中性子を減速させない性質を利用して、消費した以上のプルトニウムを生み出すとされます。一方で、ナトリウムは空気に触れると燃えるなど取り扱いが困難です。技術的な問題などから多くの国は高速増殖炉の開発を中止しています。もんじゅは初臨界翌年の1995年、ナトリウム漏れ・火災事故を起こしました。
「もんじゅ」破砕帯現地調査・・断層の露頭など観察
白木−丹生断層(中央の白い部分)を調査する原子力規制委員会の調査団=7月17日午前、福井県美浜町(代表撮影)
日本原子力機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の原子炉建屋直下を走る破砕帯(断層)が活断層の可能性があると指摘されている問題で、7月17日から始まった原子力規制委員会の専門家チームによる現地調査にはメンバー5人のうち4人が参加しました。
規制委の島崎邦彦委員長代理、大谷具幸・岐阜大学准教授、竹内章・富山大学教授、水野清秀・産業技術総合研究所グループリーダーの4人で、もう1人のメンバーの宮内崇・千葉大学教授は別に調査します。
専門家チームは、敷地の西500メートルにある白木(しらき)−丹生(にゅう)断層の露頭(地表に現れた断層)で最新の活動状況を観察しました。また、原子力機構が原子炉建屋北東側で地表をはぎ取った地点で、8本ある破砕帯のうち最長のa破砕帯の延長方向で確認された破砕帯の性状を調べました。さらに、ボーリング調査で採取した試料を観察、海底地形図などを確認しました。
もんじゅは一般の原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを燃やす原発で、燃やした以上のプルトニウムをつくり出せる「夢の原子炉」とされ、核燃料サイクルの中核に位置付けられています。プルトニウムはウランより毒性や放射能が強く、冷却材に水や空気と激しく反応するナトリウムを使うことなどから一般の原発より危険性が高いと指摘されています。
1995年にはナトリウム漏れ・火災事故を起こして14年あまり停止したあげく、2010年に再開したとたん、原子炉に重さ約3・3トンの金属製の燃料交換装置を落下させ、停まったままとなっています。昨年(2012年)、1万2000点にのぼる機器で点検漏れが発覚し、規制委から運転再開の準備を当面行わないよう命令されました。