7月17日に周かれた原子力委員会で、広瀬弘忠東京女子大学名誉教授が報告した「原子力発電をめぐる世論の変化」に関する調査では、国民の原発リスクに関する意識の深化や原子力防災対策への不満が浮き彫りになりました。(20日付既報)
アンケートは今年3月、全国の1200人(15~79歳)を対象に本人に面接し調査票を渡して後に回収する方式で行われました。
各地の原発が再稼働したとき東京電力福島第1原発と同程度の事故が起こる可能性について、「起こる」と回答したのが22・9%、「たぶん起こる」が56・8%で、合わせて約8割の人たちが起こる可能性を感じていました。これに対し「たぶん起こらない」は18・3%、「起こらない」は1・1%でした。
事故が起こると思う理由について複数回答で聞いた結果では、83・1%が「地震、津波、テロなどで、いつなんどき原発の大事故が起こるかわからないから」と答え、「核物質を燃料とする原発自体が危険だから」が46・7%、「人はミスをおかすものであり、誤った判断や行動が大事故を引き起こすから」が36・2%と続きました。
さらに、30キロ圏の人々に避難を必要とする原発事故が起こった場合の避難についても質問(グラフ)。「安全に避難できない」が19・5%、「おそらく安全に避難できない」が62・1%で、避難に不安を感じている人たちが8割に上っています。
国の原子力事故対策についての質問には、「十分にできている」「ほぼ十分にできている」と回答したのは合わせても8・6%。一方、「全くできていない」が27・1%、「あまりできていない」が63・8%で、約9割の人たちが国の原子力事故対策が不十分と感じていることが分かりました。
また、福島第1原発事故の現状については、「全く収束していない」が51・3%、「ほとんど収束していない」が42・3%で、合わせて9割以上の人が収束していないと感じています。収束していないと感じる理由では、原発内の放射性物質の危険性や汚染水の増大などをあげています。
調査に当たった広瀬弘忠氏は、「事故後の2年間で福島の状況が変わらない、むしろ悪化している。そういう認識を踏まえて、原発や核廃棄物についての世論はより否定的になっている」と分析しています。(松沼環)