東京電力福島第1原発事故のため、役場や学校など自治体ぐるみで避難した福島県双葉郡8町村や飯舘村の学校で、ふるさとのよさ、伝統、復興について学ぶ総合学習が広がっています。8町村教育長は「ふるさと創造学」と名付け、本格的にとりくむようよびかけています。
三春町で開校している富岡町の小中学校は2013年度、町の仮設住宅を訪問して住民と交流。小学校3年生は、住民から昔の町・生活のようすを聞き、ベーゴマ、お手玉をいっしょに遊びました。
4年生は、町のデイケア施設に行き、手づくりのゲームや影絵で高齢者と交流。5年生は町の文芸委員や住民から町の歴史、昔話を聞きました。
小学校は14年度、町の生活支援施設や富岡臨時災害FMラジオ局と連携して、子どもの声を発信できないか検討しています。
こうした総合学習は、浪江小学校の「ふるさとなみえ科」、葛尾小中学校の「ふるさとの復興を考えよう」、元の校舎に戻った川内小学校の「復興子ども教室」、飯舘中学校の「ふるさと学習」など多様です。
いわき市で1年前に再開した楢葉町の小中学校は、14年度、総合学習「楢葉の未来を考えよう」にとりくみます。6年生は、楢葉町の歴史を学び、産業、観光、文化、伝統の4テーマでグループ研究します。
高校では、福島市で開校している相馬農業高校飯舘校が、復興にたちあがる村の住民団体の人と福島大学教員の講義をうけ、学んだ内容を文化祭で展示発表しています。
伝統産業を学んでいるのは、浪江町にあった4校(浪江高校、同校津島校、浪江中学校、浪江小学校)です。町内に窯元が23あった大堀相馬焼の窯元や協同組合から技術実習と講義をうけています。
カボチャまんじゅう(津島校)、ささだんご(飯舘中学校)など、地域に伝わる伝統食を、調理実習で住民から教わる学校も。
双葉郡8町村の教育長会(会長・武内敏英大熊町教育長)は、「復興や持続可能な地域づくりに貢献」するとの教育復興ビジョンをまとめ、その重要な柱として「ふるさと創造学」を打ち出しています。各校に実践をよびかける一方、学習内容や育てる資質、能力がなにかなどを検討し、現場の模索に役立てようとしています。
(中村秀夫)