東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)から高濃度の放射性物質を含んだ地下水が海洋に流出している問題で、原子力規制委員会の7月31日の定例会の席上、東電が、観測井戸の地下水位が上昇していることを知りながら、規制委に情報提供しなかったとして「極めて遺憾」と批判されました。
福島第1原発
このデータは、汚染された地下水の分布を推定する上で重要な値。29日午前に開かれた、規制委の福島第1原発の廃炉までの過程を監視・評価する検討会で、2~2・5メートルという以前の地下水位を前提に汚染範囲などの推定が示されました。しかし、東電はその日の夕方の会見で地下水位が2・8メートルに上昇したと発表。検討会に出席していた東電の担当者は新しいデータを認識していたにもかかわらず、報告はなかったと指摘しました。
事務局の規制庁は、東電が重要な情報を持っていたにもかかわらず、検討会の場で提供がなかったことについてこのようなことがないように注意をしたとしています。
報告を受けて、田中俊一委員長は、東電について「危機感がまったくないのではないのか」と語りました。
また規制委は、この日の会合で、福島第1原発の汚染水流出問題が切迫した状況だとして、汚染水対策検討ワーキンググループと海洋モニタリングのあり方に関する検討会を設置することを決めました。ワーキンググループは、福島第1原発を監視・評価する検討会の下に設置、汚染の拡散範囲の特定や拡散防止策を検討します。
汚染水問題「切迫」・・福島第1原発で規制委員長
東京電力福島第1原発で放射能汚染水が増加し続けている問題で、原子力規制委員会の田中俊一委員長は7月31日、定例会見で「かなり深刻で、切迫している」と述べました。
田中委員長は「汚染されていない水を捨てる了解をいただかないと、原発の後始末は不可能」とし、放射性物質濃度が基準値以下の水は海洋放出が必要との認識を改めて示しました。東電に対しては「必死になって頼む姿勢が足りない」と述べ、引き続き漁業関係者らを説得するよう求めました。
同原発では汚染された地下水が海へ流出していることが判明し、東電への不信感が高まっています。汚染前の地下水の海洋放出にめどは立っていませんが、田中委員長は「(海へ)捨てさせてくださいと言うのは私たちの仕事ではない」とも語りました。