原発再稼働の前提となる新規制基準への適合性の審査を受けている電力4社6原発のうち、5原発がある4道県の安全審査の委員10人が、電力会社や核燃料会社など原発関連の企業・団体から少なくとも約6800万円の原発マネーを受けていることが1日、本紙の調べでわかりました。(矢野昌弘)
寄付を受けたのは、愛媛県の伊方原発環境安全管理委員会、佐賀県環境放射能技術会議、福井県原子力安全専門委員会、北海道防災会議原子力防災対策部会の委員。これらの委員会では、地元の原発の安全性や放射能調査などを評価・検討し、知事に意見をのべるなどしています。
本紙は、情報公開資料や本人が原子力規制委員会に提出した自己申告書などで、2006~11年にかけて、委員への業界からの寄付の実態を調査。
6800万円のうち、使途の制限や報告義務のない「奨学寄付」は計3260万円にのぼりました。(表)
伊方原発がある愛媛県の奈良林直委員(北海道大大学院教授)は、日本原電と原子燃料工業から計200万円の寄付を受けていました。宇根崎博信委員(京都大原子炉実験所教授)は関西電力が出資する関西原子力懇談会などから計180万円となっています。
玄海原発がある佐賀県の出光一哉委員(九州大教授)は原子燃料工業から200万円を受け取っています。福井県では委員6人が計2130万円を受けています。
奨学寄付の他にも、福井県の山本章夫委員(名古屋大大学院教授)は原電情報システムや原子燃料工業、原子力エンジニアリングから少なくとも計750万円以上の報酬を受け取っていました。また東電の子会社テプコシステムズなど5社から少なくとも計2184万円分の研究委託を受けています。
愛媛県の奈良林委員は、東電や原子燃料工業と計498万円の共同研究を行っています。
地域の原発の安全性をきびしくチェックする立場の委員が原発マネーの恩恵を受けていることは、議会でも問題とされてきました。北海道議会で日本共産党の真下紀子議員(12年6月)、佐賀県議会では武藤明美議員(同年9月)が取り上げました。
「原発利益に染まっている人は選任しないこと」と求めた真下質問を受け、他党議員も道議会で取り上げ、北海道では委員の選定基準を見直すことになりました。