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IPCCの3報告 “50年までに40〜70%削減”・・切迫する温暖化対策

1961〜90年の平均を基準とした変化(℃)。英国気象庁によるデータ(IPCC第1作業部会報告書資料から作成)
1961〜90年の平均を基準とした変化(℃)。英国気象庁によるデータ(IPCC第1作業部会報告書資料から作成)

地球の温暖化について科学的な評価などを行う国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、4月上旬、第3作業部会の報告(気候変動の緩和)を発表しました。これで、昨年(2013年)9月の第1作業部会報告(自然科学的根拠)、今年3月の第2作業部会報告(影響・適応・脆弱=ぜいじゃく=性)と合わせて、報告が出そろいました。

第1作業部会報告では、地球の温暖化の進行について「疑う余地がない」とし、人間の影響が温暖化の支配的な要因であった可能性が「極めて高い」(確率的な評価で95〜100%)としました。このままでは、今世紀末までに気温上昇が1986〜2005年の水準より、最大で4・8度、海面も最大で82センチ上昇すると予測しています。気温上昇が、産業革命前と比べて2度を超えると生態系と人間の生存条件に深刻な影響が及ぶ恐れがあります。

第3作業部会報告は、温度上昇を2度未満に抑え、温暖化の悪影響を最小限に止めるには、温室効果ガスの排出量を2050年までに今よりも40〜70%削減し、2100年は、ゼロにすることによって可能になることを示しました。そして2030年までの取り組みが遅れると、手段の選択の幅が狭くなると警告しています。

今回の報告は、温暖化の抑制が人類にとっていよいよ差し迫った課題になっていることを示しています。

新しい枠組みへ

京都議定書が定めた温室効果ガス削減の第1約束期間(2008〜12年)が終わった現在、国際社会は、2013〜20年について京都議定書の第2約束期間を設け、さらに2020年からは気候変動枠組み条約の下での新しい枠組みを設けることにしました。

新しい枠組みは、先進国・途上国を含め「すべての締約国に適用」されることで合意され、途上国も一定の削減義務を負う見通しとなりました。その具体的内容については、来年11月、パリで開かれる気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)までに合意するため、交渉が続いています。

日本では2011年3月に福島第1原発の爆発事故が起き、全国で原発が停止すると、火力による発電量が増え、温室効果ガスの排出量は増加しました。緊急避難的にはやむをえないとしても、排出増の根本の原因は、政府が原発だのみのエネルギー政策を推進し、再生可能エネルギーの普及や低エネルギー社会への取り組みに本腰を入れてこなかったことにあります。

安倍政権は昨年、それまで日本の国際公約だった1990年比で2020年までに25%削減の目標を投げ捨て、約3影増加という目標を発表しました。原発事故で放射能汚染を引き起こしたうえに、原発停止を口実に削減目標を放棄したことで、国際的な信用を喪失したのです。国際交渉における日本の発言力はすっかり低下してしまいました。

エネ政策転換を

第3作業部会報告では、原発について「各種のリスクと障壁が存在する」と記されています。国内では4月11日に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、あいかわらず原発が「温室効果ガスも出さない」と強調しています。

東北大学の明日香壽川(あすか・じゅせん)教授など温暖化問題の研究者と日本政府の元交渉担当者が連名で、今年1月、「原子力発電は気候変動問題への答えではない」という書簡を公開しました。

今も進行中の福島原発の放射能汚染の状況と被害を直視すれば、温暖化対策の推進のためには、原発の稼働をやめ、原発ゼロの決断のもとに、省エネの徹底と、再生可能エネルギーの導入を本格的に促進することが求められています。

(佐藤洋、党政策委員会)

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