東京電力福島第1原発で汚染された地下水が海に流出している問題で、8月8日開かれた国の汚染水処理対策委員会が出した方針は漁業者などの意見を顧みないものになりました。
同委員会事務局は、建屋の山側で地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」を「緊急対策」の検討議題に挙げました。出席した茂木敏充経産相も、「地下水バイパス」などで「基準値以下の水の海への放出の可能性」を検討するよう指示しました。しかし、放射能濃度にかかわらず、こうした海洋放出については地元の漁業者などが、風評被害の心配などから認めていません。
「地下水バイパス」は、地下水が建屋地下に流れ込む前に、建屋の山側に掘った12本の井戸で地下水を1日1000トンくみ上げ、水質を調べた上で海に放出するという計画。東電はこれによって、建屋内に毎日流入する400トンの地下水が300トンに減らせると説明していますが、効果のほどはわかりません。
資源エネルギー庁が6月、地元説明会を開いた時も、地元の住民らは、場当たり的な東電の対応への疑問をはじめ、「海洋投棄の行為そのものが悪影響を及ぼす」などと厳しく批判しました。
安倍首相は7日、原子力災害対策本部の会議で、汚染水問題に触れ、「東電に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」と発言していましたが、そうであるなら、住民の疑問や不安にこそ耳を傾けるべきです。(三)
地下水くみ上げ開始・・放射能汚染水流出続く東電
東京電力は8月9日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で放射能汚染水の海洋流出が続いている問題で、地下水のくみ上げを開始したと発表しました。
東電は、1、2号機の取水口の間の約90メートルにわたり、地表から深さ約1・8~14メートルの範囲に水ガラスを注入して、土壌を固める工事を完了しました。この工事で海へ向かう地下水の流れをせき止めることになるため、岸壁近くに掘った穴からポンプで地下水をくみ上げる計画です。
同日午後、1、2号機タービン建屋東側に掘った集水ピットと呼ぶ穴から地下水をくみ上げて、タービン建屋地下につながる配管用トンネルに移送する作業を開始しました。このトンネルヘの地下水移送をめぐって東電は、新たな汚染水流出につながる可能性を否定できませんでした。