原発をやめ地球温暖化も防ぐには、風力、太陽光など再生可能エネルギーの拡大が不可欠です。日本では原発にしがみつく政権の下で普及が進みませんが、世界では再生可能エネルギー100%、地域の自立的発展の展望が開けています。
世界の動向みる
自民党の細田博之幹事長代行は、原発推進を「世界中がいっている」「世界中の潮流」などとのべました(7月22日)。和田武著『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略-電力買取制度を活かして』(かもがわ出版)はこうした発言の誤りをデータで示します。2000年からの10年で、原発が突出して伸びている日本に対し、他の先進国では再生可能エネルギーが原発の9倍の伸び。アイスランドはすでに電力の100%、1次エネルギーの85%が再生可能エネルギーです。世界では7カ国が再生可能エネルギー比率20%を超えています。
過疎化に歯止め
同書は、海外視察にもとづいてドイツやデンマークの事例を紹介。電力買取制度を導入し、発電経費を賄える買取価格を設定することで、地域住民による小規模な発電所が普及するのがポイントだと指摘します。
人口減に悩む村の住民が、共同出資で地域の特性を生かした風力やバイオマス(わら、間伐材、畜産廃棄物など)の発電所をつくり、発電が新しい地域産業となって雇用を生み、過疎化に歯止めがかかる−。地域の自立的発展の明るい展望が実例で示されます。
日本では騒音や低周波が問題になる風力発電も、住民が自らに被害が出ないようにつくるので問題視されていないといいます。「独は仏の原発の電気を輸入している」という話には事実で反論。「電力買取制度で電気代が高騰する」という懸念にも答えています。
多数のシナリオ
デンマークは2050年に再生可能エネルギーを100%にする計画をもちます。豊かな再生可能資源をもつ日本は100%にする十分な展望があります。
槌屋治紀著『これからのエネルギー』(岩波ジュニア新書)は、世界のエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うシナリオが、研究者などの手で多数示されていることを紹介。2050年に日本で100%を実現する著書のシナリオも示します。
最近話題のシェールガスを「弁当箱のすみをつついて資源を掘りつくす『最後の悪あがき』」と指摘。化石燃料がまだあるうちに再生可能エネルギーに移行すべきだと強調します。
依存しない道へ
岡田知弘・川瀬光義ほか編著『原発に依存しない地域づくりへの展望−柏崎市の地域経済と自治体財政』(自治体研究社)は新潟県柏崎刈羽地域について検証し、原発が地域の発展に寄与していないことを明らかにします。
自立的な発展に踏み出すうえで、地域住民主体の再生エネルギー発電は展望を与えます。(西沢享子)