東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)のタンクから漏れている放射性物質を大量に含む水の量はこれまでに300トンにのぼることが8月20日、明らかになりました。漏れた汚染水の大半は周辺の土壌に染み込んだといいます。福島第1原発からは放射性物質で汚染された地下水が海へ流出し続けており、このままでは同原発とその周辺の放射能汚染はひどくなるばかりです。直ちに汚染の拡大を食い止める万全の対策が求められています。
(「原発」取材班)
タンクから漏れているのは、1~4号機の原子炉建屋やタービン建屋の地下などにたまっている高濃度放射能汚染水から放射性セシウムや塩分などを取り除いた後に出る廃液(濃縮塩水)です。ストロンチウム90やトリチウム(3重水素)などの濃度は、高濃度放射能汚染水とほぼ同じです。東電は、このような放射性物質で汚染された水を、福島第1原発の構内に所狭しと並べられたタンクに貯蔵しています。
周囲だけパトロール
今回濃縮塩水漏れが明らかになったのは、4号機西側(山側)に設けられたH4エリアと呼ばれる一角に26個設置された容量約1000トンの円筒形のタンクの一つです。タンクはフランジ式というタイプで、いくつもの鋼鉄製の部品をボルトでつないでつくってあります。継ぎ目にはプラスチック製のパッキンがはさんであります。
フランジ式は東電によると設置に時間がかからないとして、濃縮塩水などの貯蔵用タンクの主流となっています。今回、タンクのどこから漏れたかはまだわかっていませんが、これまでもフランジ式のタンクでは継ぎ目部分から濃縮塩水などが漏れ出す事故が4件起きています。これまではそれほど多くの濃縮塩水が漏れ出す事故にはなっていませんでしたが、1個約1000トンの容量のあるタンクから漏れ出せば、広い範囲が放射性物質で汚染される可能性があることは明らかでした。
しかし、東電は1日に2回、タンクの周囲をパトロールするだけでした。直径10メートル以上のタンクが重なりあって立っているのに、内側にあるタンクの方まで見て回ることはなかったといいます。東電は19日のパトロールで漏れ出しているのを発見したときの濃縮塩水の勢いからして、短期間で大量に漏れ出したとは考えられないとして、かなり以前から漏れていた可能性があることを認めています。
堰の弁は開けっ放し
しかも、タンクから濃縮塩水が漏れ出したときに備えて周辺に設置してある堰は雨水を抜くための弁が常時開けた状態となっていたため、濃縮塩水が堰の外へ流れ出してしまったのです。東電が過去の同型のタンクでの事故を教訓に対策を取っていれば、300トンもの濃縮塩水が土壌に染み込む事態は避けられたはずです。
地下水を通じ海へ流出する危険
東電は、周辺の排水溝で採取した水に含まれる放射性物質の濃度が高くなっていないとして、濃縮塩水が海へ流れていない可能性が高いとしています。しかし、土壌へ染み込めば、そこから地下水を通じて海へ流出していきます。それにもかかわらず海へ流出していないなどと強弁する東電は当事者能力を欠いているとしかいえません。
今回の事故は、いったん原発事故が起これば、放射性物質による汚染が際限なく広がる危険性があることをあらためて示しました。安倍自公政権は原発再稼働に血道をあげるのでなく、福島第1原発の現状と真剣に向き合い、これ以上放射性物質による汚染の拡散を防ぐための抜本的な対策に全力をあげるべきです。