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プレートなぜ動く? マントルの流動が寄与・・海洋研究開発機構が発見

地球の表層はプレート(岩板)と呼ばれる十数個のブロックに区切られ、その運動によって地震・火山活動や大陸移動が起こっていると考えられています。海洋研究開発機構の研究チームは北海道南東沖の海底下でプレートを動かす原動力にかかわる現象を発見し、科学誌『ネイチャー・ジオサイエンス』電子版(3月31日付)に発表しました。

(間宮利夫)

海洋研究開発機構の小平秀一・地震津波海域観測開発センター長たちは、千島海溝や日本海溝などに沈み込む前の太平洋プレートについて研究を進めています。09年6月と10年7月には、北海道南東沖で深海調査船「かいれい」を使い、太平洋プレートが千島海溝へ沈み込んでいくのと同じ方向の約500キロメートル、それと直角に交わる方向の約235キロメートルの範囲の海底下の構造や地震波の伝わり方を調べました。

14-04-27kouzouエアガンから発射した音波が海底下から反射してくるのを受信機や海底地震計でとらえ、得られたデータを解析した結果、北海道南東沖の海底下には二つの顕著な特微があることがわかりました。

 

一つは、マントル最上部で地震波(P波)の速度が、沈み込んでいく方向と、それと直交する方向で大きく異なる現象が観測されたことです。沈み込んでいく方向では秒速8・6キロメートルでしたが、それと直交する方向では同7・8キロメートルでした。

この現象は「地震波速度の異方性」と呼ばれ、マントル最上部がかつて高温で流動したことを示すとみられています。マントルを構成する主要鉱物のかんらん石は1100度程度で流動する際、流動する方向に結晶がそろう性質があります。沈み込む方向と、それと直交する方向で地震波速度が異なるのはこのためと考えられています。

14-04-27puretoもう一つは、地殻下部で北西側に20〜25度の傾きをもつ不連続面がマントル最上部との境目となるモホロビチッチ面まで約2・5キロメートル間隔で延びているのが見つかったことです。これは地震が起こった場所などにみられる「リーデルせん断」と呼ばれる現象と似ています。

リーデルせん断は、ある物体に力が加わったときに、その力が加わった方向に対して斜めの変形が生じる現象です。不連鏡面がリーデルせん断だとすると、その傾きの方向から、あるとき地殻下部に北西から南東へ引っ張る力が働いたことになります。

太平洋プレートは、東太平洋の海底にそびえる海嶺、東太平洋海膨を起源とし、西へ移動しています。このため、西へ行くほど年代が古くなりますが、北海道南東沖は例外で、北西の端の千島海溝に近づくほど年代が新しくなります。

これは北海道南東沖の太平洋プレートが東太平洋海膨でなく、すでに地球内部に沈み込んでしまったイザナギプレートとの境界にあった中央海嶺で1億2000万年前ごろ生まれ、北西から南東に移動していたためと考えられています。

北海道南東沖の太平洋プレートの起源と観測事実を照らし合わせると、プレートは生まれたときマントル最上部の流動によって引きずられたことを示しています。

 

小平さんたちが見つけた二つの特徴は、北海道南東沖の太平洋プレートが生まれたとき、マントル最上部の流動によってプレートが北西から南西へ押されたことを示しています。

プレートを動かす原動力が何かをめぐっては、これまでプレートの直下にある高温で粘性の低いマントルの運動によって押されるとする説と、海溝から地球内部に沈み込んでいくプレートそのものの重さで残りの部分が引っ張られているという説があり決着がついていません。

太平洋プレートのように千島海溝から日本海溝、伊豆・小笠原海溝へ続く長い沈み込み帯をもつプレートほど速く動くことなどから後者の説が有力とみられていますが、沈み込み帯をもたないプレートも動いていることなど前者の説を支持する現象も確認されています。

小平さんは「プレートの運動は、大局的には沈み込むプレート自身が引き起こしているといえるが、今回の研究結果は、少なくとも中央海嶺付近ではマントルの流動がその原動力であることを示す有力な証拠だと考えている」と話します。小平さんたちは、今後、東太平洋海膨で生まれた太平洋プレートでも北海道南東沖の海底下と同様の現象がみられるかどうか検証するため、ハワイ諸島北方の海底下の調査を行うことにしています。

(図と写真は海洋研究開発機構提供)

さらに詳しくは、こちらの海洋研究開発機構のHPをごらん下さい

プレートテクトニクス

地球の表層が十数個のブロックに分かれ、相互に運動しているとするプレートテクトニクスの理論は、海底の地磁気の観測結果から導かれた海洋底拡大説などに基づいて1960年代に確立されました。その後、異なる場所に設置した電波望遠鏡で遠くの天体を観測することによって地点間の距離を測るVLBI(超長基線電波干渉法)でハワイと日本の距離が年々縮んでいることなど、その考えを支持する結果が得られています。

太平洋プレートのような海洋プレートは、深海底にそびえる山脈、中央海嶺で生まれ、海溝から地球の内部に沈み込むことで一生を終えます。海洋プレートは地殻とマントル最上部の硬い岩盤を合わせたリソスフェア(岩石圏)という層でできています。生まれたばかりの海洋プレートは中央海嶺から噴出したマグマが固まった玄武岩からなる地殻だけでできたごく薄い層にすぎませんが、中央海嶺から離れるに従ってマントル最上部の高温で流動的なアセノスフェア(岩流圏)と呼ばれる層が徐々に冷えて固まって付け加わるため厚みを増していきます。海溝で沈み込むころには、厚さ約100キロメートルに達します。

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