「福島原発事故・災害―2年半後の現実と打開の展望」と題した集いが日本科学者会議主催で8月24日、福島大学で開かれ、東京電力福島第1原発事故による汚染水漏えい防止への研究強化など活発な討論が行われました。集いは25日まで。
初日は、シンポジウム「福島原発事故の評価をめぐって」が行われました。
元電力中央研究所の本島勲氏は、汚染地下水の漏えい防止のために、地下水・地質構造を把握して対策を立てることが必要で、原子力規制委員会、研究機関、日本科学者会議も含めてあらゆる英知を結集させることが大切だと強調。経済産業省の汚染水処理対策委員会が凍土壁による対策を採用したことについて、現地で他の方策との比較調査もしないのは問題だとし、費用はかかるが粘土壁のほうが有効だと報告しました。
核・エネルギー問題情報センターの舘野淳氏は、原発は放射能という巨大な潜在的危険性を持っていること、軽水炉は強大な熱の制御機能が脆弱(ぜいじゃく)で欠陥商品だと指摘しました。
福島大学教授の清水修二氏は、チェルノブイリ原発事故との対比で、日本では健康被害をめぐって正確な情報が共有されていないこと、高濃度汚染地域は移住も含めた検討がいる時期ではないかと報告しました。
日本大学准教授の野口邦和氏は、福島第1原発からの放射性物質の新たな放出は事故当初の約8千万分の1に減少しており、除染を急ぎ生活環境を改善させる重要性を報告しました。
討論では、▽原発事故は収束どころか汚染水問題が深刻化するなかで原発再稼働は許されない▽汚染水漏れ防止のためには「原子力村」という概念で区分けするべきではなく、非常事態という認識が必要▽福島県民の健康管理を進めるための県の県民健康調査―などについて活発な意見が交わされました。
討論のまとめでは、日本科学者会議として専門研究を強め住民運動とも連携し、原発事故での危機的事態の打開に向け、国と東電を動かしていこうと呼びかけられました。