福島第1原発の汚染水問題が深刻です。汚染された地下水の海への流出に加え、汚染水をためるタンクからの高濃度汚染水の大量漏えいが発覚。放置してきた安倍内閣も、やっと「東電任せにせず、国として対策を講じる」といいだしました。
東電のずさんな管理体制をみると、汚染水の海への流出は最初から「想定内」だったのではないかと思えてきます。タンクからの汚染水漏れのチェックは1日2回の巡視。急ごしらえのタンクにはまともな計測態勢もなかったといいます。
度し難いのは、タンクから漏れた汚染水を食い止める堰(せき)の排水弁をすべて開けていたことです。雨水が抜けるようにしていたというのが東電の言い分。しかし、それでは雨水ばかりか汚染水も漏れてしまうことは素人でもわかります。
東電の「確信犯」とも思える所業の数々。海は単なる「水」ではありません。プランクトンもいれば魚もいる、生き物の棲(す)む場所です。そして当たり前ですが海は世界につながっています。
日本がどういう態度をとるか。世界が注目しています。原発再稼働も輸出も、もはや論外です。政府は事故の「収束宣言」をただちに撤回し、日本の信用をかけて対応すべきでしょう。
それにしても何と危機意識の薄いことか。公開中の映画「少年H」のせりふが頭をよぎります。「今、何が起きてるんか、自分の目でよう見とくんや」。世の中が戦争の渦に巻き込まれていく中、少年Hの父親がHに諭す言葉です。時代状況は違いますが、今に通じます。