日本教育学会(藤田英典会長)は8月28日から3日間東京で開いている大会で29日、公開シンポジウム「原発事故・放射能被災を学校教育はどう受け止めるか」を開きました。
東京電力福島第1原発の立地自治体・大熊町の大野小学校元校長の大清水久雄さんは、同町をふくむ双葉郡内の校長会会長などの役職経験者が、原発の「教育担当広報」になり、学校の全学年にわたる出前授業や、教職員やPTAの原発見学などを系統的に実施していたことを紹介。「そのなかで、原発は多重防護で安全だと信じてきた」とのべました。
事故後の学校再建を同僚や子どもたちといっしょにがんばってきた教師5人を、2011年5月、年度途中に県教委の人事異動で他校に送り出さなければならなかった「無念」を語りました。
境野健兒・福島大学名誉教授は、放射能汚染への父母の不安を学校がどう受け止めてきたかについて報告。
今後の課題として、「ふたたび根拠なき安全神話が教育によって広がらないように」、モニタリングの徹底と再除染、被ばくをさける親の判断を尊重し、父母同士がその判断を容認することや、親が正しい知識を得る学習機会の保障をあげました。
子安潤・愛知教育大学教授は、教科書や行政がつくる副読本などでの、原発のメリット・デメリットを併記するというやりかたは、中立・公正にみえるが、結論は原発依存になる構造になっており、特定の見地を教えることになると指摘。そこから脱しなければならないとのべました。